【白河だるま(下)】絵付け、大胆かつ繊細に

 
(写真上)だるまに絵付けをする記者。筆の力加減が分からず、うまく描くことが難しかった(写真下)記者が絵付けしただるま(左)

 オリジナルだるまの完成を目指し、最も大切な絵付けに挑戦する。白河だるま総本舗(白河市)に取材に行くたびに、職人が絵付けをする姿を見ていたが、実際に体験するのは初めて。「ちゃんと描けるのかな」という不安と楽しみな気持ちが入り交じる中、筆を握った。(白河支社・伊藤大樹記者)

 今回絵付けするのは、高さ約8.5センチの手のひらサイズのだるま。同本舗14代目の渡辺高章さん(30)に「筆とペン、どっちでやる?」と聞かれ、せっかくなので絵付け職人と同じように筆で挑戦することにした。

 渡辺さんから手渡されたお手本のだるまを見ながら、筆に黒いインクを付けて眉毛を描いていく。「あれ、全然真っすぐ描けない」。筆先が柔らかく、力加減が難しい。お手本のだるまは細い線でしっかり描かれているのに、記者のだるまは線に統一感がない。耳ひげ、顎ひげを描くにつれて「まずいかもしれない」という焦りが出てきた。修正を加えれば加えるほど不格好になっていく。

 「これ以上顔を描いたら後戻りできない」と察したので、筆を替えて縁の模様と「福」の文字を入れていく。こちらは少し太めに描いても大丈夫そうなので、大胆に攻めてみたつもりだったが、自信なさげな字になってしまった。それでも「うまいじゃん」という渡辺さんの優しい励ましの言葉を信じ、最後まで修正を重ね、世界に一つだけのオリジナルだるまを完成させた。

 何となく見ていただるまも自分で作ってみることで、一つ一つに違いがあることを実感。大胆さや繊細さが必要で、手作りの奥深さに改めて気付かされた。職人に「どうしてそんなに上手なんですか?」と尋ねると、「慣れです」と照れたような表情で答えてくれた。感服だ。

 無事、13個目のオリジナルだるまを会社の机に迎え入れ、ほかのだるまと見比べてみると、差は歴然。職人の技術の高さを身をもって知ることができたと同時に、もっとだるまが好きになった。

          ◇

 白河だるま 寛政の改革で有名な白河藩主松平定信の「市民の生活をより元気にしたい」という思いから生まれた。だるまの顔は、耳ひげに松と梅、眉毛に鶴、ひげに亀、顎ひげに竹が表現されており、幸運の象徴とされている。

          ◇

 記者への挑戦募集中

 企画「TRY」では、本紙記者にチャレンジしてほしいこと、体験を通して魅力や苦労を知ってほしいことを県民や企業・団体などから広く募り、記者がその"挑戦"を受けて体験、掲載していきます。

 申し込み、問い合わせは報道部にメール(hodo@minyu-net.com)で。はがきでの申し込みは郵便番号960―8648 福島市柳町4の29 福島民友新聞社報道部「TRY係」へ。氏名(企業・団体名)と住所、電話番号、挑戦してほしい内容を明記してお送りください。