【科捜研(上)】ささいな手がかり逃さない 見えない文字、くっきり復元

 
(写真上)物理科で「ショート」を体験する記者(左)、(写真下)人文科で体験した目に見えない筆圧の跡から、文字を復元する業務。左が記者自身が書いた紙で、右が4枚目の紙を鑑定した結果

 日々の取材活動で接する県警の警察官から、声をかけられた。「科捜研(科学捜査研究所)の仕事に挑戦してみない?」。科捜研といえば、女性法医研究員を中心としたミステリードラマを思い浮かべる。「白衣姿で事件解明...想像しただけで格好いい」。迷わず引き受け、福島市の科学捜査研究所を訪れた。(報道部・熊田紗妃)

 出迎えてくれたのは小松聖英所長。まずは業務内容を尋ねると「犯罪や事故現場に残された証拠を科学的に分析し、捜査を支える仕事」と教えてくれた。

 県警の科捜研は人文、法医、物理、化学の各科に分かれている。そのうち、物理科の業務を体験してみた。主任研究員の中村光宏さんによると、物理科は火災の原因究明や防犯カメラの画像解析などを行っている。火災現場に出向き、原因究明を行うこともあるという。

 体験したのは、発火原因の一つの「ショート」。2本の銅線を近づけると「バチッ」と音がして火花が散った。この火花がほこりなどに移ると、小さな火花もみるみるうちに炎が広がる。意外な発見だった。「身近な所にも発火源は潜んでいる」。そう考えたら恐怖感が襲ってきた。

 コンセントとプラグの隙間にほこりや湿気がたまって発火する「トラッキング現象」など、発火は電気機器を使用していない状態でも起こり得るという。「火災は人為的要因で起きることが多い。乾燥する冬季は特に定期的な掃除が大切」と中村さん。「自宅の掃除をしないと」と思った。

 鑑定業務などを行う人文科では、目に見えない筆圧の跡から、文字を復元する業務を体験した。まずはメモ用紙の1枚目に「福島民友新聞社」と書く。見た目には何も書かれていないように見えるメモ用紙の4枚目から、1枚目に書かれた文字を復元するという。

 「本当に分かるのか」。数時間後、結果が出た。自分が書いたものと全く同じ言葉、字体が紙に写し出されていた。字体が鮮明すぎて、驚きのあまり言葉が出てこない。「ぱっと見は何を書いたのか分からなくても鑑定で全て分かります」と担当の研究員。少しぞくっとした。

 科捜研では研究員が専門的な知識を生かし、より高度な分析で犯人の手がかりを探していることが分かった。次はドラマのモデルにもなっている法医科の仕事に挑戦する。白衣を身にまとい、気分は研究員の一員だ。

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 科学捜査研究所 通称・科捜研。警視庁と各道府県警本部の刑事部に設置されている。事件や事故現場で証拠を集める鑑識技術者と協力しながら、それぞれの専門知識や技術を応用して、現場で採取された資料の鑑定などを行う。

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