【8月11日付編集日記】サラ・ベルナール

 

 「天は二物を与えず」と言うが、例外もあるようだ。19世紀末フランスの女優サラ・ベルナールは脚本や小説も手掛け、自身の名を冠した劇団も主宰。絵画や彫刻など芸術家としてもその名を世にとどろかせた

 ▼一流の芸術家を発掘する眼力も持っていた。チェコ出身の画家アルフォンス・ミュシャを見いだし彼の作品を演劇用のポスターに起用した。ミュシャは一躍、アール・ヌーボー(新しい芸術)の申し子となった

 ▼サラが活躍した19世紀末のフランスでは産業革命による経済発展を追い風にパリを中心として新しい芸術が生まれた。ベル・エポックと呼ばれた繁栄の時代として語られる

 ▼そんな自由な風潮の良き時代、サラは演劇以外の何事にも貪欲に取り組んだ。よく口にした「それでもなお」は多彩な分野に挑戦する彼女の生き方を示す言葉だ。この時代の作品は9月1日まで、いわき市立美術館で開かれている「サラ・ベルナールの世界展」で見ることができる

 ▼マルチな才能を持つ人物は歴史に名を残した。しかし、才能を持ちながら花開かせることができなかった人も多かっただろう。特に女性はそうだ。多様性が問われる現代、隠れた才能を見いだす眼力も必要だろう。