【8月12日付編集日記】いわき七浜海道

 

 ペダルがなく足で地面を蹴って走るとはいえ、当時としては画期的な乗り物だったろう。200年ほど前、ドイツで発明された自転車は、江戸時代末期に日本に伝わったとされている

 ▼明治時代に入り自転車の利用は広がった。ただ当時は高価で一部の人たちのステータスシンボルでもあった。各地で貸自転車屋が繁盛したという。今でいうレンタサイクル店だ

 ▼夏目漱石はロンドン留学時代に自転車を初体験した。下宿先のおかみさんから勧められて始めたが「或(ある)時は石垣にぶつかって向脛(むこうずね)を擦りむき、或る時は立木に突き当って生爪を剥がす」など四苦八苦した(「漱石紀行文集」藤井淑禎編・岩波文庫)

 ▼漱石は当時、体調がすぐれなかったようだ。鏡子夫人は「漱石の思い出」(松岡譲筆録・文春文庫)の中で、「人通りの少ない郊外なんぞを悠々と乗りまわしているうちに、よほど気分も晴れやかになったとみえて」と漱石にもたらした「自転車効果」を語っている

 ▼いわき市のサイクリングロード「いわき七浜海道」の一部区間が利用できるようになった。自転車のレンタルもできる。健康づくりに自転車を活用する契機にしてはいかがだろう。くれぐれも、運転にはご注意を。