【8月16日付編集日記】父と暮せば

 

 俳優の佐藤B作さんは福島市飯坂町の出身だ。上京後、学生演劇でデビューし30代前半にはテレビ番組で人気者になった。順風満帆に見えるが「初めは福島弁が抜けず苦労した」と言う

 ▼そのB作さんが、このお盆、里帰りして近況を報告した。「今は広島弁で苦労してます」。広島市を舞台にした井上ひさしさん作の二人芝居「父と暮(くら)せば」が、B作さんの古希記念として、このお盆中の2日間、福島市で上演された

 ▼原爆投下から3年後。B作さん演じる父は、1人暮らしの娘の前に幽霊となり現れる。そして広島弁で聞くのは仕事や結婚のこと。親と子の当たり前の会話が続く

 ▼ただ、生き残ったことに罪悪感を抱く娘は人生を前向きに考えられない。そんな娘を父はしかる。おまえは生かされている。悲しかったこと、楽しかったことを伝えるのが仕事だと

 ▼きょうでお盆も終わる。親類同士でいろんな話をしただろうか。戦争や災害の記憶を語り継ぐことの大切さが叫ばれるが、近しい人との会話の中にも、記憶を引き継いでいく初めの一歩がある。B作さんは「故郷で広島弁を話すのは恥ずかしい」と熱演を照れていたが、たまには身内同士、照れるような真面目な話も大切だ。