【10月18日付編集日記】国のかじ取り

 

 池波正太郎さんの時代小説に、五百川(いおがわ)という川の出てくる短編がある。江戸時代、藩存続のため苦悩し奔走する藩士を滋味深く描いた「疼痛(とうつう)二百両」である

 ▼主人公は、北国の某藩に仕える江戸留守居役52歳。彼の国元では、毎年のように五百川が氾濫する。郡山、本宮両市を流れる、阿武隈川の支流五(ご)百川(ひゃくがわ)を知る人は、かつてこの地を治めた二本松藩を連想するだろう

 ▼フィクションなのだが、財政難のために河川改修の莫大(ばくだい)な費用は「出したくても鼻血さえ出ぬ」と語られる背景が生々しい。確かにわが国では昔から、阿武隈川水系をはじめ各地で水害との闘いが続けられてきた

 ▼台風19号による甚大な被害からの復旧作業が、多くの人たちの手で続いている。犠牲者の中には、まさに復旧の作業中、濁流にのまれたとみられる方もいる。住む者一人一人によって、古里が守られている事実を改めて胸に刻まねばならない

 ▼そして、県内などの被災地を視察したわが国の首脳には、いっそう肝に銘じていただきたい。池波さんの小説では、某藩を危機に追いやった遠因は、国元の財政など省みない殿様の失政だった。地方の一人一人が古里を守るには、的確な国のかじ取りが必須だろう。