【11月9日付編集日記】道しるべ

 

 カーナビやスマートフォンの地図機能が普及する前は、車の助手席に必ず地図が載っていた。初めて行く場所の取材は、地図を見ることから始まった。最初から道に迷う時間も計算に入れて車に乗り込んだ

 ▼現地に向かったものの、目的の場所がさっぱり見つからないことも多かった。そういう時は近くにいる人に聞く。迷っている姿を見かねて、声を掛けてくれる人もいた。地元の人々の温かい言葉の道しるべに助けられたことは数え切れない

 ▼アラブ首長国連邦で開幕したパラ陸上の世界選手権で、女子400メートル(視覚障害T13)に出場した佐々木真菜さん(東邦銀行)が4位に入り、来夏の東京パラリンピック代表に内定した

 ▼佐々木さんは目に入る光の量を調節する虹彩(こうさい)ができずに生まれてくる「無虹彩症」という病気を抱え、目の前の景色もぼんやりとしか見えないという。競技では幅が5センチの白いラインを手がかりにして走るそうだ

 ▼佐々木さんが陸上に取り組むようになったきっかけは、小学生のころに担任教師から掛けられた「パラリンピックに出られるかも」との言葉だったという。念願の大舞台で、ラインと恩師の言葉を道しるべに金メダルへの道を駆け抜けてほしい。