【11月13日付編集日記】只見線駅文庫

 

 古書店主で直木賞作家の出久根達郎さんは店の書棚の本を入れ替えた際、見覚えのない本が続々と出てきたことがあった。書棚は背表紙しか見えず、表紙から伝わる本の個性を見過ごしていたためだ

 ▼店の書棚は売れ行きの良い本は人の目の高さに並べ、売れ残ると下の棚に移していくという。出久根さんの好む本は書棚の隅にあることが多く「面白い本は片隅に息をひそめている」と明かしている(「書棚の隅っこ」リブリオ出版)

 ▼県はJR只見線の会津柳津、会津川口駅に「只見線駅文庫」を開設した。本は県立図書館が提供した。誰でも自由に借りることができ、列車内で読むために駅舎から持ち出した本は次回、駅を訪れた際に返却してもらう

 ▼只見線の利用促進が目的で、両駅には児童書や小説など幅広い分野の本が合わせて300冊用意された。同館が蔵書の役割を終えた本の中から内容などを検討して只見線の利用者向けに選んだという

 ▼一冊ずつに備えたカード入れには、地元の子どもたちの手書きメッセージカードが入っていて、只見線と地域の魅力を伝えている。図書館の書棚の片隅にあった本に新たな活用の道を開いた文庫は、乗客の心を潤してくれることだろう。