【11月19日付編集日記】交換日記

 

 富士山の頂上まで簡単に登れるようにとエレベーターを造ったら、やはり余計なお世話だろう。一歩一歩踏みしめながら進んでこその登山。ボタン一つで到着では、山頂からの景色もいまひとつに違いない

 ▼不便であることで得られる利益を「不便益」というそうだ。この風変わりな利益の研究に取り組む、京都大の川上浩司特定教授は、便利さを際限なく追い求める現代の風潮に対して「社会や文化に対して有益なことであろうか」と疑問を呈している(「不便から生まれるデザイン」化学同人)

 ▼西会津町が交換日記を使った婚活企画を始める。互いの顔も知らない町内外の男女が町を通して日記を何回かやりとりする。会う際には、しおりに日時を書き込み、同町で待ち合わせる

 ▼町の担当者は、日記を書いてから戻ってくるのを待つ間に、相手への思いが強まっていくのではないかと期待している。「会えない時間が愛育てる」と歌ったヒット曲を地で行く作戦だ

 ▼異性との連絡はもっぱら携帯電話の通信アプリという人も多いだろう。すぐにメッセージが届くのが魅力だが、早く返信しなければと気をもむこともある。たまには自分の思いにゆっくり向き合う時間があってもいい。