【4月19日付編集日記】小さな侍

 

 黒澤明監督の名作「七人の侍」。野武士集団から村を守るために集められた侍たちが死力を尽くす物語で、村を襲う野武士の目当ては収穫期を迎えた農作物だった

 ▼侍たちは柵をめぐらせるなどの防衛策を講じ、農民とともに襲撃に備えた。時代は移り、実りを迎える時期に用心しなければならない相手は、イノシシやサルなどの野生動物に変わった

 ▼南相馬市が、農作物を守るための「助っ人」として秋田犬を起用する。狩猟犬の遺伝子を引き継いでいるとされる秋田犬はむやみに戦わず、ほえて威嚇したり、マーキングしたりして、他の動物を寄せ付けない性質があるという

 ▼秋田犬発祥の地とされる大館市のホームページに引用されている秋田犬の審査基準の一つ、「本質とその表現」の一部を紹介する。「沈毅(ちんき)(沈着で剛毅(ごうき)の意)にして威厳を備え」「忠順にして素朴の感あり」などと定義されている

 ▼恩義を忘れず主人には忠実。かといって甘えすぎるわけでもない。武士然としたたたずまいもうなずける。同市から寄贈される予定で、散歩などを通じ野生動物を遠ざけることを計画している。やってくるのは雄の子犬。小さな侍の成長を見守る地域と一緒に、外敵と知恵比べだ。