【10月26日付編集日記】最終盤の戦い

 

 劣勢から逆転を狙う「泥沼流」と呼ばれる棋風で一時代を築いた米長邦雄永世棋聖は、よく将棋をマラソンに例えた。「序盤や中盤で後ろにいてもなんてことはない。ゴールを駆け抜ける時に前に出ていればいい」

 ▼対戦相手のわずかな変化を読もうと、時間や体力、労力を無駄に消費しない「省(しょう)の精神」を追究した。「序盤ではとんでもない悪手を指さない限り、勝敗に直結しない。一手の価値は終盤の方が高い」と勝負どころでの最善手にこだわった(「棋士米長邦雄名言集」マイナビ)

 ▼プロ野球は最終盤に入り、優勝争いが熾(し)烈(れつ)を極める。143試合の長いシーズンは、セ・パ両リーグとも残り試合が1桁の段階で優勝が決まっていない。マラソンでいえば競技場に入り、デッドヒートを繰り広げる状況で、最後の一手が命運を握る

 ▼異例の短期決戦となった衆院選は、後半戦に入った。県内の各陣営は序盤からエンジン全開で舌戦を展開する。有権者の審判を仰ぎ、議席獲得というゴールを目指す戦いは、まさに正念場だ

 ▼永世棋聖は「最終盤での小さなミス、それはすなわち負けを意味する」とも語った。どんなに優勢な局面を迎えても、最後の一手まで、戦いは気を抜けない。