【5月20日付編集日記】100円の精神

 

 今や日本を代表する商売の形態は、トラックを使った雑貨の移動販売から始まった。男性が荷台から商品を降ろしていると、客から次々と値段を聞かれる。しかし伝票を見る暇がなく、「全部100円でええ」と答えたことがきっかけだった

 ▼「安物買いの銭失い」。業界最大手ダイソーの創業者、矢野博丈さんは、客から浴びせられた言葉に発奮した。「どうせ儲(もう)からんのだし、いいもん売ってやる」。原材料価格をぎりぎりに抑えても品質では負けない。そんな商品を大量に仕入れ、店頭に並べた(大下英治「百円の男」祥伝社文庫)

 ▼急成長を遂げてきた「100均」も、原材料価格の上昇への対応に迫られている。商品数を絞り込んだり、無人のセルフレジを導入したりと、なるべく低価格で販売しようという企業の意気込みを感じる

 ▼最近は品質を高め、300円や500円均一の商品を販売する店舗が増えてきた。それでも普通のハンバーガー1個が数千円する海外からすれば、この低価格、高品質の商品は驚きだろう

 ▼国内もペットボトルの水で100円以上が当たり前。できる限り安く、消費者が満足できる商品を―。脱デフレの時代に、日本企業が大切にしたい心構えだ。