【8月11日付社説】古関裕而生誕110年/まちづくりに遺産生かそう

 

 故郷が生んだ国民的作曲家の「遺産」をまちづくりに生かしていくことが求められる。

 福島市出身の作曲家古関裕而さんがきょうで生誕110年となった。古関さんは、甲子園で開催中の夏の全国高校野球の大会歌「栄冠は君に輝く」、1964年の前回東京五輪の選手入場行進曲「オリンピック・マーチ」をはじめとするスポーツ関連曲や、歌手の故藤山一郎さんの代表曲「長崎の鐘」などで知られる。

 来年春から始まるNHK連続テレビ小説では、古関さんと妻の金子さんをモデルにしたドラマ「エール」が放送される。生誕110年の節目とドラマの放送を県民が古関さんの業績に改めて触れ、曲に親しむ好機としたい。

 「エール」の放送決定は県外の人々に本県について知ってもらうチャンスだ。福島市は観光誘客の要として市音楽堂敷地内にある古関裕而記念館のリニューアルを進めている。ただ、観光客の玄関口となるJR福島駅から記念館の間に古関さんを目当てに来た観光客が楽しめる趣向に乏しいのが気掛かりだ。

 同市などがドラマ放送に向けて設立した「古関裕而のまち・ふくしま協議会」は福島駅前通りからレンガ通りの名称を「古関裕而メロディーストリート」と改称することを検討しているほか、古関さんをアピールするロゴマーク、生家などゆかりの地をめぐる観光コースづくりなどを進めている。

 本県では2013年のNHK大河ドラマ「八重の桜」で会津若松市が前半の舞台となったのが記憶に新しい。同市は鶴ケ城など従来の観光資源に加え、期間限定の大河ドラマ館を設けて1年で61万人を集客した。東日本大震災で落ち込んでいた観光客数を一気に回復させ、震災前をさらに約60万人上回った。同市の試算によると、経済効果は215億円に上った。参考にしてほしい。

 古関裕而記念館は放送決定以降、来場者が前年の2倍で推移している。半年間にわたり週5日ずつ古関さんの物語が放送される影響は大きいと予想される。福島市などには、ドラマを見て訪れた観光客が「来て良かった」と思えるような環境づくりが求められる。

 古関さんが80歳で亡くなってから今月で30年になり、作品になじみが薄い世代が増えているのは寂しい。古関さんは県内で90を超える学校に校歌などを提供している。小中学校の音楽演奏や鼓笛パレードなどの際に校歌をはじめとした古関メロディーを積極的に演奏するなどして浸透を図りたい。