【8月18日付社説】高山植物の盗掘/監視の目強め再発防止図れ

 

 かけがえのない自然を壊してしまう盗掘を防ぐため、万全の備えを講じていくことが重要だ。

 磐梯朝日国立公園内の浄土平湿原周辺(福島市)で、高山植物が盗掘されたような痕跡が発見された。環境省東北地方環境事務所によると、掘り起こされた跡は約90カ所で、観光客が利用する木道から人目につきにくい場所にあった。特定はできないが、希少な植物が被害に遭った可能性がある。

 浄土平湿原は、四方を一切経山や吾妻小富士などの山々に囲まれた、標高約1600メートルに位置する平地だ。浄土平ビジターセンターに隣接しており、車を降りた後に整備された木道を歩き、四季折々の高山植物を気軽に楽しむことができる観光名所になっている。

 しかし、近年では、高山植物の盗掘被害が相次いでいる。2017年には約100カ所に及ぶ大規模な盗掘が確認され、ラン科の希少な高山植物「ホソバノキソチドリ」や「コバノトンボソウ」などが盗まれた。18年も同様に約40カ所の盗掘跡が見つかった。今回の盗掘では、ラン科以外の高山植物なども持ち去られたとみられる。今後も盗掘が繰り返されることのないよう、監視の目を強化していかなければならない。

 対策の中核を担うのは、環境省が8日に県や福島署、福島森林管理署、自然公園財団浄土平支部と設立した「盗掘防止対策連絡会」だ。盗掘の被害を受け、環境省が浄土平周辺に夜間でも録画することができる監視カメラを増設したほか、自然保護官や自然公園財団のメンバーらによるパトロールを強化して警戒に当たっている。

 連絡会では今後、各機関の情報を共有し、今回の掘り起こしがどのようにして行われたかなどを分析する方針だ。ただ、対応が急がれるのは、来シーズンの盗掘をどのようにして防いでいくかだ。

 近年の盗掘被害は夏季に集中している。連絡会の各機関には、人が湿原に出入りし始める春先からシーズンを通して効果的な対策を展開できるよう、有識者の見解を求めるなどしてあらかじめ準備を進めておくことが求められる。

 高山植物の無断採取は、自然公園法により禁止されている。違反した場合には6カ月以下の懲役、または50万円以下の罰金が課される。販売目的などの盗掘は論外だが、個人の趣味で1本だけ採取することなども認められない。

 一度乱されてしまった環境は回復に時間がかかり、景観も損なわれる。豊かな自然を後世に引き継いでいくために、一人一人がルールやマナーを守っていきたい。