【11月16日付社説】食と農の復興支援/大学連携効果を地域の力に

 

 本県の基幹産業である農業の新たな展望を開いてもらいたい。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの農業復興を加速するため、福島大が「食と農」の分野で県内外の大学・高専とネットワークをつくる。福島大と東大、東京農工大、福島高専など6校で構成し、福島イノベーション・コースト構想推進機構の補助事業として進められる。

 農業の再生、支援を巡っては、震災後、各大学の研究グループが浜通りなどの被災市町村で個別に研究に取り組んできた。ただ、成果の還元は地域にとどまりがちで、どんな活動をしているのかが伝わりにくい側面があった。

 大学のネットワーク化は、これらの取り組みに「横串」を入れる形で、各大学の研究成果を集めて共有し、新しい知見を生み出すことが狙いだ。大学と地域の個別の結び付きだけに終わることなく、ネットワークを通じて、それぞれの大学が支援する地域同士の交流促進にもつながっていく意欲的な取り組みといえる。

 中心的な役割を果たす福島大には、地域の農業再生に向けて実効性ある取り組みにしていくことが求められる。

 各大学はこれまで、除染した水田でのコメの収量や品質、食味の改善、新しい有機栽培技術の開発、人工知能(AI)を活用した農作業の省力化と農家の負担軽減、微生物の利活用といった研究で成果を上げている。

 被災市町村の中には、担い手の確保や集落の維持が難しく、営農再開への道のりが険しい地域がある。各大学の知見、ノウハウを、必要としている全ての地域に還元していくことが大切だ。

 今後の取り組みとして福島大は、12月にも初会合を開く予定で、併せて市民に向けたフォーラムを予定している。

 被災地を訪ねて現場で学ぶツアーや、ITを駆使したスマート農業、ドローンなど先端技術の体験にも取り組む。農業に携わる人材育成も目標に掲げており、将来を担う子どもらを対象にした出前講義に力を入れる。

 こうした取り組みは、全国の大学や学生、農業従事者、自治体、市民らに広く参加を呼び掛けながら進めていく。将来的には、復興農学会(仮称)をつくることを想定している。本県の現状に対する理解が広がり、風評払拭(ふっしょく)につながることを期待したい。

 福島大を核にした本県発の食と農のネットワークを、全国に誇れる教育研究拠点にしていくことが重要だ。