【5月30日付社説】新型コロナ・文化活動の再開/つながる意識で前に進もう

 

 音楽や美術、演劇など本県の文化活動の再開を、行政、各団体、市民それぞれの立場から進めていくことが大切だ。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、音楽発表会や美術展、講演会など文化活動の自粛が続いている。密閉、密集、密接の「3密」を避けるため、各団体は思うように練習などができず、発表の場も失われている状態だ。県文化振興財団によると、各団体の発表会などへの助成事業も申請の取り下げが増えている。

 本県の新型コロナ感染は今のところ抑えられている状況にある。県はイベント開催については、全国的、広域的なものを除き、段階的に緩和する方針を示している。

 文化関係団体やイベントの主催者らは、万が一、感染を広げてしまったら―という不安から、実施をためらうこともあるだろう。一方で、活動の再開を楽しみに待つ人たちは大勢いる。感染防止対策を徹底した上で、臆することなく踏みだしてほしい。

 全国では、京都市が新型コロナの影響で発表、制作の場がなくなっている文化芸術関係者を対象に、活動を支援する緊急奨励金を支給する取り組みを始めた。千件を超す応募があり、「こうした支援があると活動意欲が湧いてくる」「前向きに取り組める」といった声が寄せられているという。

 文化活動の再開は、同時に社会経済活動の活発化につながる。県、各市町村には、各地の取り組みを参考にしながら支援策を検討してもらいたい。

 福島わらじまつり、郡山うねめまつりといった県内各地の伝統的な夏祭り、花火大会なども相次いで中止となっている。このままの状況が続けば、活気はなかなか戻ってこないだろう。

 国指定重要無形民俗文化財の「相馬野馬追」は、規模を縮小して無観客で行われる。これから開催予定の伝統行事などは、伝統のともしびを消さず、地域ぐるみでつないでいく意識が必要だ。

 霊長類学者で京都大総長の山極寿一氏は、本紙の評論で「共同体を超えて人々がつながるためには、スポーツやコンサートなどの大きなイベントが欠かせない」と指摘している。その上でコロナ禍の状況が続けば「『共に生きる喜びや力』を奪われ、個人がばらばらになってしまう」と危惧する。

 文化活動は「不急」かもしれない。ただ、決して「不要」ではなく、心に潤いを与える不可欠なものだ。地域の隅々で活動を続けていくことから、本県の新たな活力を生みだしていきたい。