【7月16日付社説】認知症の支援/地域で見守る環境育てたい

 

 認知症の人と家族の生活を支える、地域のネットワークを広げていくことが大切だ。

 昨年1年間に全国で認知症か、その疑いで行方不明となり、警察に届け出があったのは1万7千人を超え、過去最多を更新した。本県は前年より21人少ない163人だった。9割強の人は所在が分かったものの、発見時に死亡が確認された人もいる。

 厚生労働省によると、認知症の人は団塊世代がすべて75歳以上になる2025年には700万人に達し、高齢者の5人に1人が認知症になると予測されている。誰でも認知症になる可能性があることをまず理解し、認知症の人を特別視せず、地域住民一人一人が見守る意識を持つことが必要だ。

 認知症の人と家族を支援する取り組みとして、県は地域での見守り役でもある認知症サポーターの養成を進めている。現在、児童生徒を含め県内に約20万人いる。また、本人や家族と地域住民、福祉関係者らが交流し、情報を共有する場として認知症カフェの取り組みが広がっており、50市町村に約130カ所ある。

 認知症の人は、物忘れなどでスーパーや銀行、公共交通機関の利用時などに戸惑ったり、道に迷ったりする場合がある。認知症になってからも地域で暮らしていくためには、困っている様子に気づいたら声を掛けるなど周りの人の支えが不可欠となる。県、市町村は認知症を知ってもらう取り組みに力を入れ、さらにサポーターを増やしてほしい。

 福島市松川町で毎年、認知症の人の発見や声掛け、通報の模擬訓練が行われている。実施する松川地域安心・安全ネットワーク委員会会長で、県認知症グループホーム協議会の森重勝会長は「訓練の運営を通して、知らなかった人同士があいさつを交わし、隣近所の顔が見えるようになってきた。訓練は出発点で、地域コミュニティーづくりが目的」と話す。

 内閣府の世論調査で「認知症になったとしたら、どのように暮らしたいと思うか」の問いに、4割強の人は自立的に、もしくは医療、介護などのサポートを利用しながら、今まで暮らしてきた地域で生活したいと回答している。住み慣れた地域での生活を望む人は少なくない。

 県は、認知症の人や家族を支える行動計画(県版オレンジプラン)を策定している。計画期間は本年度までで、次期計画の策定作業に入る。認知症の人が普通に暮らせる社会づくりの確かな指針としてもらいたい。