【10月28日付社説】読書週間/本と向き合う時間つくろう

 

 深い思索をシンプルな言葉で紡ぎ続けた福島市出身の詩人、長田弘さんは「本は読まなくてもいいのです。しかし、自分にとって本を読みたくなるような生活を、自分からたくらんでゆくことが、これからは一人一人にとってたいへん重要になってくるだろうと考えるのです」(「読書からはじまる」日本放送出版協会)と書き残している。

 インターネットの普及で、必要な情報を得ることが数十年前と比べ、極めて簡単となった。人工知能(AI)は飛躍的な進化を遂げている。経済協力開発機構(OECD)は、AIによる自動化などで14%の仕事で機械が取って代わり、およそ半分の仕事に影響が及ぶとしている。

 インターネット、AIをはじめとする技術は、人の暮らしを便利にしてくれるものだ。しかし、技術は、人が「こうなれば便利なのに」「こんなことが知りたい」と考えなければ生かし切れない。人の考える力、想像力があってこそのものである。

 読書週間が始まった。本には、知識だけではなく、人が人生や科学について考えた過程などが書き込まれている。本に親しむことで、人にしか持ち得ない、深く考え、新しい何かを思い浮かべる力を培っていくことが重要だ。

 気がかりなのは、子どもの読書量の減少だ。県教委の調査によると、1カ月に1冊も本を読まない生徒の割合が、中学生の2割弱、高校生の4割強に上る。

 中高生が本を読まない理由については、部活動や勉強が忙しいことを挙げる生徒が最も多い。一方で、県内の中学生の7割が、1日当たり1時間以上の時間をスマートフォンや携帯式を含めたテレビゲームに費やしている。

 本を多く読む生徒ほど、成績上位の割合が高いことも明らかになっている。ゲームの時間を少し減らすなどして、本を読む時間をつくることが大切だ。

 日本財団の調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響で社会活動が停滞したことにより、本を読む量が増えたのは、読書が好きな人の4割に上った。一方、読書が好きでも嫌いでもない人や、読書が嫌いな人が本を読む機会はほとんど増えていない。読書の二極化が浮き彫りとなった状況だ。

 コロナ禍で、カミュの「ペスト」や小松左京の「復活の日」をはじめ、感染症の流行をモチーフとした小説などが人気を集めた。非常時への向き合い方を本に求めた結果だろう。本の持つ力を改めて見直したい。