【7月5日付社説】参院選・安全保障/不戦の思い共有した議論を

 

 日本が再び戦争当事国となり、戦禍で尊い命が失われることがあってはならない。その前提を共有して議論を深めてもらいたい。

 ロシアのウクライナ侵攻を背景に、防衛政策への関心がこれまでになく高い参院選となっている。北朝鮮が核弾頭の搭載を見据えたロケットの発射実験を繰り返し、中国による台湾への武力行使を危惧する声も強まっている。日本を巡っても、中国が尖閣諸島周辺で軍艦を航行させるなど、軍事的威力を示す活動を繰り返している。

 日本を取り巻く国際情勢は、決して楽観していられるものではない。戦争や戦闘行為に至らないために何が必要か、日本が攻撃される可能性が高まった際にどう行動すべきか。防衛力の強化を重視する党派も、それに反対姿勢をとる党派も、その両方の課題を見据えた議論が求められる。

 自民党は政府の経済財政運営の指針となる「骨太の方針」の策定に際し、敵基地を攻撃し、相手領域内でミサイル発射を阻止する能力(反撃能力)を保有することを提言した。国内総生産(GDP)比2%以上も視野に防衛費を増やすことを掲げ、公約にも盛り込んでいる。主張に濃淡があるものの、自民のほか、複数の与野党が防衛力の強化を掲げている。

 日本が戦闘行為に巻き込まれる可能性を考慮すれば、防衛に関する議論を忌避するべきではない。心配なのは、防衛費を巡る議論がGDP比など規模の問題に集中し、その費用で何をするのかという点が見えにくくなることだ。

 防衛費の増額を掲げるならば、示すべきは予算の指標ではなく、相手に攻撃を思いとどまらせる、あるいは相手の攻撃から国を守るために何が必要で、それにどれほどの費用がかかるかだろう。その議論を抜きにして予算にばかり議論が集中するのは、前のめりの感がある。各党は、国を守るために何をすべきかをこそ語るべきだ。

 防衛費増額への反対姿勢を鮮明にする共産、社民両党は、アジア各国などとの協調関係の構築が重要とする。しかし、攻撃される可能性が高まった時の対応についての訴えが薄い。万が一の備えも語ってこそ、増額に反対する訴えに説得力が生まれるのではないか。

 自民も来年の先進7カ国(G7)議長国として、国際秩序の維持に取り組むとしている。平和の維持に向け、外交が重視されるのは各党とも一致している。

 国力の低下が指摘される中で、日本が各国の協調をどう主導していくのか。防衛の議論に埋没させずに主張を展開してほしい。