【9月13日付社説】知的障害者の支援/地域の理解醸成が不可欠だ

 

 今月は知的障害者福祉月間。日常生活を送るのにさまざまな不自由を抱えた知的障害者をどう支えていくのか、社会全体で考えるきっかけにしたい。

 最新の障害者白書によると、知的障害者は全国に109万人いる。このうち9割近くは自宅などから福祉施設などに通っており、約1割が施設に入所している。日本に住む人のうち100人に1人が該当する計算だが、その障害の程度はさまざまだ。知的障害者の生活の多くは自宅と、福祉施設や一般企業などの仕事先との行き来にとどまるため、健常者との接点は少ないのが現実だ。

 鮫川村の福祉施設「鮫川たんぽぽの家」の江尻勝巳施設長(県知的障害者福祉協会会長)は健常者の理解不足により、知的障害者が集まって暮らすグループホームの整備が地域の反対で難航するケースがあると指摘する。「知的障害に対する理解が十分ではない結果、知的障害者が何か問題を起こすのではないかと思われてしまう」と話す。

 同施設は地元の中学校の交流事業などを通じて、地域の人に知的障害者の実情を知ってもらうように努めているという。知的障害者と健常者の間に壁をつくらないためにも、若い世代のうちから知的障害者に対する理解を深めてもらうことが大切となる。

 知的障害者を取り巻く環境で、今後問題が深刻化するとみられるのは、健常者と同様、高齢化の問題だ。在宅の人は、親に費用面を含めて生活の世話を見てもらっている場合がほとんどだ。

 生活の世話をしてくれる人がいなくなってしまえば、知的障害者の多くは暮らしていく上で大きな困難が生じる。グループホームで支援員のサポートを受けるなどしながら生活するのが現実的だが、グループホームの整備には地域の理解に加え、支援する人の確保が課題となってくる。

 高齢などで授産施設などで働くことが難しくなった人が、スムーズに介護施設に入れる仕組みづくりが重要だ。

 国や福祉行政を担う市町村には地域の状況や高齢化に即した形で、知的障害者の生活場所の確保を支えることが求められる。

 知的障害者に関係する仕事は、重労働で、給料が安いというイメージがあり、敬遠されがちなのは否めない。地域で知的障害者を支えようとすれば、彼らを支援する仕事への人材誘導は不可欠だ。国は報酬のかさ上げ策などを通じて、多くの人がこの仕事に目を向けるようにしていく必要がある。