【5月16日付社説】温泉地の再生/魅力向上へ財源有効活用を

 

 温泉地の再生、魅力向上のため限られた予算を有効に活用していくことが重要だ。

 県内各地の温泉地で入湯税の引き上げや、公衆浴場の料金値上げなどの動きがある。1人当たり1日150円が標準税額の入湯税は市町村に納められる目的税だ。会津若松市は税額を引き上げ、増額分を東山、芦ノ牧両温泉の休廃業で放置された旅館やホテルの解体や撤去、景観の整備に活用することを検討している。

 福島市は、飯坂温泉で旅館などの事業者が支払う温泉利用料、公衆浴場の料金を値上げする方向で調整している。老朽化が進んでいる温泉供給施設や設備の改修費用に充てることが主な目的だ。

 新型コロナウイルス禍で観光客数が減少した影響で、税収や料金収入が減り、自治体や事業者は厳しい財政状況にある。施設の改修や景観の改善などを実行し、大切な観光資源である温泉を守り、維持していくためであれば、入湯税や料金の引き上げを検討するのは避けられない。

 ただし利用客と共に地元住民や旅館、ホテルの経営者などの理解を得ることが前提だ。いわき市は観光客の減少を懸念する事業者などの声を踏まえ、今後3年間、入湯税の引き上げを見送る方針を固めた。会津若松、福島両市は使途や必要性を明確に示し、引き上げの是非を判断してほしい。

 東山、芦ノ牧両温泉の昨年の外国人宿泊客数は1万7千人と、前年の10倍近くになった。インバウンド(訪日客)にとって温泉は魅力的な観光スポットだ。県内は泉質や効能の異なる温泉が点在しており、本県観光の強みでもある。

 インバウンド需要への依存度が高まるなか、他県との誘客争いは激しくなるだろう。入浴や宿泊以外に、古くからの建物が多い風情ある温泉街の散策を楽しめたり、新鮮な食材を使った料理や地酒を味わえたりなど、自治体や温泉地は新たな魅力の創造に力を入れ、競争力を高める必要がある。

 観光振興の財源として、自治体が独自に旅館やホテルの宿泊客から徴収する宿泊税を導入する動きが各地で相次いでいる。入湯税を徴収している自治体の多くは「二重課税」になるとして導入に慎重だが、国内有数の温泉地である静岡県熱海市は導入を決めた。

 自主財源に乏しい自治体ほど、観光振興の予算確保が難しい。宿泊税を導入しても観光客数への影響が少ないとみられる東京都、京都市などとの格差が広がりかねない。国は活性化に取り組む地方の温泉地の支援を強化すべきだ。