【5月17日付社説】福島DC/観光業の足腰強める契機に

 

 JR6社が展開する2026年4~6月の大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」で本県が全国に大きくPRされることが決まった。本県がDCに登場するのは、21年の東北合同、単独では15年以来となる。

 前回の単独DCでは観光客入り込み数が前年まで3年間の平均を1割強上回り、その後も19年まで順調に入り込みを伸ばすきっかけとなった。しかし新型コロナウイルス感染症の影響により、20年以降の入り込みは低迷している。前回の結果を見ても、DCの誘客効果は極めて大きい。

 県や関係団体などでつくる観光復興推進委員会は26年の入り込み数の目標について、コロナ禍前の19年実績を上回る1600万人とした。ただ、重要なのは期間中の入り込み数よりも、DC以後もいかに安定して誘客できる仕組みを作っていくかだ。限りある人材と観光資源を最大限に生かす方法を探り、足腰を強め、観光業を持続可能な形にすることが大切だ。

 県は本県の独自性をアピールする柱として、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興の歩みを発信する「ホープツーリズム」、発酵食品を観光資源に組み込んだ「発酵ツーリズム」などを据えたい考えだ。今秋までに25年に展開されるプレDCに向けた具体的な内容を固める。

 県外の人と話していると「第1原発は見学できるのか」と聞かれることが多い。東電はホープツーリズムのツアーの受け入れを行っているが、個人で申し込める視察会は土曜日だけだ。

 第1原発はホープツーリズムの軸となり得る存在だ。防護服なしで大半の区域に出入りできるようになった原発を多くの人に見てもらうことは、観光への影響のみならず、廃炉、復興の進み具合を実感してもらう上でも有益だろう。入構時の身元確認などはおろそかにできないものの、DCに合わせて、個人を含めた多くの人が原発をより見学しやすくなるよう、県は東電に協力を求めてはどうか。

 日本酒を柱とした発酵ツーリズムは、県民であってもどこを見に行けばいいのか分かりにくく、誘客効果を高める余地は十分にある。お勧めのコースや楽しみ方のPRが必要だ。

 観光業の強化を目指す上ではDCの準備と並行して、インバウンド(訪日客)への対応強化も同時に進めなければならない。訪日客は、団体ツアーではなく、個人個人がプランを組み立てるパターンが中心で、個人への効果的な発信も強化していくことが不可欠だ。