【5月21日付社説】経済安保の新法/運用指針の厳格化が必須だ

 

 機密情報の保全対象を経済安全保障分野にも広げる新法「重要経済安保情報保護・活用法」が成立した。民間人を含め、国が身辺調査で信頼性を認めた人のみが情報を扱う「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」制度の導入が柱となっている。

 新法制定の背景にあるのは、サイバー攻撃の拡大などにより、これまでの防衛や外交に加え、経済や技術の分野での安全保障の重要性が高まっていることがある。これらの分野の情報管理を徹底するには、同盟国との連携が不可欠で、秘密管理の制度をほかの国々と同水準にする必要があった。制度創設の趣旨は理解できる。

 宇宙分野など、軍事と民間の両面で使える技術の開発競争が世界で激しくなっている。機密保護制度が整うことで、こうした分野の国際共同開発に参画できるようになることなどが期待されている。

 デジタル化が急速に進み、情報の持つ重要性は増している。制度面の違いにより、他国と連携できず、経済と安全の両面で取り残される事態を避けることが重要だ。

 課題として指摘されているのは、国が保護の必要な情報を恣意(しい)的に指定することなどにより、国民の知る権利が制限される恐れがあることだ。新法は国会による情報の指定や解除、適性評価の実施状況を監視することを盛り込んでいるものの、対象となる情報は具体的には明示していない。

 情報の指定などについては、透明性確保が不可欠だ。公布から1年以内の施行に向けて、運用指針を厳格にすることが求められる。

 新法は、政府の指定する「重要経済安保情報」の取り扱い資格を巡って民間企業の従業員にも国の調査を行うことを定めている。

 調査は本人の同意を得た上で、当事者への質問や関係機関への照会などにより犯歴や精神疾患の有無、経済状況などを調べる。調査そのものを拒否した場合や調査で不適格とされた場合に、職場での昇進や職務に影響が出るのではないかという指摘がある。新法は企業などが審査の結果を目的以外で利用することを禁じており、仕事への影響にも目配りしているものの、徹底できるかは不透明だ。

 新法は有資格者とされた人が、情報を漏えいした際には拘禁刑などの罰則を科すことを盛り込んでいる。機密保全に向けて個人の情報を審査し、違反者には刑罰を科すとなれば、何ら後ろ暗いことがなくとも対象者となり得る人の負担、不安は大きいだろう。政府は、こうした人々の不安の払拭にも取り組む必要がある。