苦しみ抜いて1勝 未経験の連続も焦らず
甲子園での1勝はこんなに重いものなのか。圧倒的な力で県大会5連覇を成し遂げた聖光学院にとっては、“聖地”での戦い方の難しさをまざまざと思い知らされた一戦だった。
「チームで勝ち取った勝利だ」。こう口をそろえるナインの言葉が延長10回までもつれた激戦を物語った。3点ビハインドの展開。福島大会の6試合全てで先制点を奪う盤石の試合運びで勝ち上がったナインにとって未体験の連続だったが、焦ることなく立ち向かい続けた。
「エースをマウンドから下ろすことが第1目標だった」。ナインは斎藤智也監督が予想した展開にまず持ち込む。制球に苦しみだした日南学園のエース古市賢助(3年)に代わり、6回途中からマウンドに上がった村田陽菜(3年)に襲いかかった。
7回に2四球に適時打2本、犠飛を絡めて逆転に成功。しかし、すんなりとは勝たせてくれなかった。9回表2死一、三塁。エース歳内宏明(3年)が三振を奪うものの暴投で同点に。
ここで一念発起したのは中村星太(3年)。延長10回、「苦しい投球だった歳内を助けてやりたい」。主将も経験した7番打者は先頭で初球に食らいついて出塁すると、その思いが通じたかのように歳内の適時打でサヨナラのホームを踏んだ。「うまくいく試合が毎日あるわけではない。一瞬一瞬をやり切るだけ」と中村。目標の「頂点」へ。1勝を積み重ねることを胸に刻んだ。
(2011年8月7日 福島民友・高校野球ニュース)
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