【佐久長聖−聖光学院】５回表聖光学院１死一塁、二盗が悪送球を誘い三塁に進んだ八百板＝甲子園

　１回に先制点を許し、立ちこめた暗雲を４番安田光希（３年）の一打が振り払った。２回無死、先頭で打席に立った安田は左翼線に二塁打を放ち、同点の口火を切った。
　「１点を取られた直後の嫌な場面だった。狙っていた直球を打つことができた」。相手左腕が投げ込む１３０キロ台後半の直球に力負けせず、振り抜いた打球がチームを鼓舞した。
　安田は自信を持って打席に立った。「福島大会で対戦してきた投手を考えれば、打てない球じゃない」。日大東北の大和田啓亮（同）、小高工の菅野秀哉（同）ら福島大会で対戦した１４０キロ台の直球と鋭い変化球を投げ込む好投手の存在が、安田を成長させていた。
　「このチームで、この仲間と１日でも長く野球がやりたい」。主砲・安田の一打がベスト８進出の鍵を握る。

　駆けた八百板、自慢の足　兄との誓い「てっぺんを」
　「１球目から狙っていた。絶対に成功すると思って走った」。３−１と２点リードで迎えた５回１死、中前打で出塁した１番八百板卓丸（３年）は、出塁直後の相手投手の１球目に二塁への盗塁を決め、さらに悪送球で三塁に進んだ。八百板の攻撃的な走塁が、続く２番藤原一生（同）の右犠飛につながり、４点目を奪った。
　５０メートル走６秒０の俊足を生かした走塁に加え、２安打を放ち、リードオフマンの役割を果たした。得点にはつながらなかったが、三回の第２打席は左中間に二塁打を放った。「２ストライクを奪われても粘ろうと思っていた」。果敢で華やかな走塁とは表裏の泥臭く粘った打撃もまた、チームに勢いをもたらした。
　八百板の姿を見守る人がいる。一つ年上の兄飛馬（ひゅうま）さんだ。昨年春、夏の甲子園で聖光学院の主軸として活躍した飛馬さんは、甲子園へ出発する弟に手紙を渡した。「全力で甲子園で暴れてこい」。八百板は手紙に書かれていたその言葉を胸にダイヤモンドを駆け回った。
　八百板は幼いころから一緒に野球を練習してきた兄を心から尊敬している。その兄の手紙にはもう一言添えられていた。「今年はてっぺんを取ってほしい」。その言葉は聖光学院で甲子園を目指した全ての人の思いでもある。「絶対に日本一になる」。不動のリードオフマンは、託された思いを受け止め、３回戦に臨む。
（２０１４年８月２０日　福島民友・高校野球ニュース）