“入魂の拳”完全燃焼 須佐選手、「福島のため」貫いた夏
最初で最後の五輪は終わりを告げた−。県勢として52年ぶりにボクシング競技に31日出場した男子フライ級の須佐勝明選手(会津若松市出身・自衛隊、会津工高卒)は1回戦でキューバのロベイシ・ラミレス選手と対戦、7−19で判定負けした。須佐選手にとって短いものだったかもしれないが、「福島のために」との使命に熱く燃えた夏だった。
「負けたら引退」と決めていた。東日本大震災と原発事故に遭った本県を照らす希望の光となるため、メダル獲得というプレッシャーを自らに課して必死に戦い抜いた。だから、試合後に漏らした言葉は「本当に申し訳ない」だった。
「アップでも調子は良かっただけに悔しい」。言い訳になるような言葉を語ることはなかった。対戦相手は長身でリーチの長いアウトボクサー。距離を置いた戦いでは相手に分があり、1ラウンドからガードを固めて接近戦に持ち込んだ。しかし、手数が多くパワーのあるパンチに苦戦。理想とする接近戦での強さを発揮できずに、ポイント差は広がっていった。
「オリンピックに行かせてもらって幸せだった。何とかメダルという形で貢献したかった。違う形で地元に貢献できればと思う」。大会前に「福島県代表として戦う」と誓っていた須佐選手の言葉は、最後まで福島への思いだった。
(2012年8月1日 福島民友ニュース)
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