聖光学院ナイン『自分のため』からの変化 センバツ敗戦を糧に
春のセンバツで2回戦敗退の屈辱を味わって以降、追い求めてきた野球を体現してみせた。いわき市で22日行われた高校野球の福島大会決勝。優勝は、聖光学院のナインが「一瞬一瞬をやり切る」という姿勢に徹した結果だった。成長した"不動心"で高校野球100回目の大舞台に挑む。
斎藤智也監督は初回の選手の表情を見て、手応えを感じたという。「(選手が)試合に相当入り込んでいた。自分たちのペースで試合を運べると思った」。決勝独特の雰囲気に左右されることなく、ナインはただ目の前の試合に集中。快勝で甲子園への切符をつかんだ。
現チームの原点は春のセンバツでの大敗にある。能力さえ発揮できれば「歴代指折り」と斎藤監督は表現する。しかし、秋の東北大会を制し、5年ぶりに出場したセンバツで東海大相模(神奈川)に3―12で敗退。「ぶざまな試合だった」と矢吹栄希主将(3年)は振り返る。勝利にこだわるあまり一つ一つのプレーの精彩さを欠いた。
センバツでの反省から取り組んだのが「一瞬一瞬をやり切る」という姿勢。目の前の1球に全力を尽くし、結果として勝てたらいい―。そんな野球観をナインは共有していった。その姿勢はチームの雰囲気も変えた。精神的支柱を担う荒井秀人選手(同)は「センバツの時はそれぞれが『自分のため』だったが、変わっていった」と話す。
チームはその後、春の東北大会を制覇。福島大会でも東北王者の重責をものともせず、連覇を「12」に伸ばした。
矢吹主将は「甲子園で(勝ち続けて)残れるなら、残りたい」としながらこう続けた。「やり切ることが、そこ(勝ち続けること)につながる」。一回りも二回りも成長した姿で春の雪辱を果たす。