エースの自覚...聖光・佐山 気迫の投球、天国の祖母に届けた勝利

兵庫県西宮市の甲子園球場で14日に2回戦3試合が行われた第104回全国高校野球選手権大会第9日。第1試合に登場した本県代表の聖光学院は3―2で横浜(神奈川)に競り勝った。このほか、今春の選抜大会覇者大阪桐蔭は聖望学園(埼玉)に19―0で大勝。二松学舎大付(東東京)は社(兵庫)を7―5で下し、ともに3回戦に進んだ。
【評】一進一退のせめぎ合いの中、一度もリードを許さず、我慢の戦いを貫いた聖光学院に軍配が上がった。
聖光学院は同点とされた直後の4回2死三塁、生田目の中前打で勝ち越した。しかし、5回に再び追いつかれる苦しい展開。その裏、赤堀と高中の連打で無死一、三塁の好機を築くと、安田の二ゴロ併殺の間に三走赤堀が生還、3度目のリードを奪った。その後はエース佐山が追いすがる横浜打線に対し安定した投球。7回1死二塁の一打同点のピンチも切り抜け、終盤までもつれた僅差の一戦を制した。(小野原裕一)
多彩な球種、横浜打線翻弄
胸に手を当ててひと呼吸し、「おばあちゃんが見守ってくれているから大丈夫」と心の中で自分に言い聞かせる。聖光学院のエース佐山未来(3年)の投球前のルーティンだ。
強豪相手に9回2失点と快投。「おばあちゃんにありがとうと伝えたい」。天国の祖母に勝利を届けた。
春の県大会決勝を終えた5月下旬、大好きだった父方の祖母ががんで亡くなった。「おばあちゃんっ子」だったという佐山。祖母は栃木県の実家の近くに住んでいて、中学生の頃は試合前にいつも「頑張ってきてね」と優しくエールを送ってくれる心強い味方だった。
「おばあちゃんが近くにいるような気がする」。祖母の遺骨が入ったペンダントを身につけて、試合に臨んだ。
気迫あふれる投球だった。初回は不安定な立ち上がりで21球を投じたが、2回以降は低めに集め、連打を許さなかった。
ヤマ場は1点リードで迎えた7回。1死二塁のピンチでギアを上げた。139キロの直球で1人目を三振に仕留めた後、次の打者を追い込むと、捕手山浅龍之介(同)からのサインに1回、2回と首を振る。「自分が一番自信があるボールでいく」。最後はスライダーで打ち取った。8、9回はいずれも三者凡退で切り抜け、意地を見せた。
福島大会は右足のけがの影響もあり、本来の投球ができなかった。大阪入り後は投げ込みや走り込みで徐々に調子を戻し、1回戦では復調の兆しが見えた。「このチームのエースは自分だ」。自覚と責任を胸に腕を振り、伸びのある直球と多彩な変化球で翻弄(ほんろう)する持ち味を披露した。
1、2回戦と優勝経験校を相手に接戦をものにした。「次も厳しい戦いになる。粘り強く投球する」。天国の祖母に最高の結果を報告できるよう、頂点を目指して戦い続ける。(熊田紗妃)
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