聖光、感謝の夏 「主役は全員」赤堀が引っ張った無類のチーム

日本一に挑戦し、一つの壁を越えた夏に終止符が打たれた。20日に行われた第104回全国高校野球選手権の準決勝で仙台育英(宮城)に敗れ、試合後に涙を流した聖光学院。チームは絶対的な柱の主将赤堀颯(はやと)(3年)が掲げた「無類のチーム」を目指し、1年間にわたって泥くさく懸命に白球を追い続けた。
どれだけ時が長く感じられただろうか。四球に連打、「らしくない」失策も絡み、2回に11点を失った。「流れをどうやって止めようか考えたが、しのぐすべがなかった」。赤堀は悔しさをにじませた。
全国の4強まで勝ち残ったチームだが、1年前の船出は、敗戦のショックから立ち直ることから始まった。昨夏、福島大会準々決勝で光南に敗れ、夏の甲子園連続出場が13で途切れた。グラウンドで泣き崩れる先輩たち。「あの敗戦は衝撃的だった」。強い執念を持って野球に取り組んでいた憧れの先輩たちだっただけに、その負けが赤堀の勝負心に火を付けた。
だが、チームの評価は決して高いものではなかった。「いつ負けてもおかしくないチーム」。斎藤智也監督は昨秋、現チームをそう表現していた。主将となり、常に先のことを考えながら高い意識を持ってチームをまとめた赤堀。「自分たちには力がない」。そうチームに言い聞かせ、ミーティングを繰り返して意思を統一させた。
冬を乗り越え大きな成長を遂げたナインは、県内の公式戦無敗で夏の甲子園へ乗り込んだ。甲子園では「1勝するのが精いっぱいという見方もあった」と指揮官。だが驚異のチーム力で初戦から甲子園の優勝経験校に3連勝し、準々決勝では難敵の九州学院(熊本)を下した。
「赤堀がつくったチーム。これだけキャプテンが影響を及ぼしたチームは過去にない。よくチームをつくってくれた」。指揮官は主将の存在をそう語る。1999年の監督就任から、数多くの選手たちを指導してきたが「私自身すごく勉強になったし、一緒にいて楽しい選手たちだった」とたたえた。
ほかにない唯一無二のチームを赤堀は「無類」と表現し、高みを目指してきた。「全員主役を言い続け、控えメンバーの力を借りて同じ気持ちになって戦ってくれた部員に感謝したい」。グラウンドでは涙があふれたが、最後は仲間への感謝の思いがあふれた。(副島湧人)
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