【21世紀枠・磐城センバツへ】野球がしたい一心...災害に負けず

 
台風19号の被災地で災害ごみを運び出す選手たち=昨年10月、いわき市

 選抜高校野球(センバツ)の21世紀枠に選ばれた磐城。選手らは昨年10月の台風19号に加え、2011(平成23)年にも東日本大震災を経験した。避難を余儀なくされたり、外で遊ぶことすらままならなかった時もあった。「野球をやりたい」。その一心で競技を続けた選手ら。コバルトブルーのユニホームであこがれの夢舞台に挑む。

 「とにかく怖かった」。11年3月11日、主将の岩間涼星(2年)が住むいわき市佐糠町も津波が襲った。車で避難する最中に目に入ったのは容赦なく迫る大きな波。自宅に被害はなかったが、庭は津波の影響で荒れ果てていた。

 震災後、神奈川県の親戚宅に約2週間避難した。不安な生活を送る中、テレビで見たセンバツ。一生懸命に白球を追いかける球児の姿が目に焼き付いた。「自分も野球がしたい」。いわきに戻った岩間は野球を始めた。

 同市添野町の小川泰生(2年)の自宅は震災で半壊。千葉県の親戚宅へ避難し、小学1年から続けていたソフトボールが一時できなくなった。自身も災害を経験しただけに被災地を勇気づけたいとの思いは強い。「勝って地域の人に恩返ししたい」と意気込む。

 「震災を思い出すほどの被害」と昨年の台風19号を振り返る岩間。「地元のためにできることがあれば」と、秋季大会後に仲間とボランティア活動を展開、平平窪などの被災地で泥をかき出す作業や家財道具の運び出しに取り組んできた。

 台風で被災した関係者も、選手たちの姿に力をもらっていた。磐城が最後にセンバツ出場した1974(昭和49)年当時の監督だった御代田公男(82)は自宅が床上浸水し家財道具や車などに被害を受けた。

 それでも磐城が21世紀枠の候補となり、出場を祈りながら復旧に取り組んだ。甲子園出場が決まり「台風の被害を吹き飛ばす活躍を」と期待を寄せる。

 不安な生活の中でも、野球から力をもらった選手ら。今度は2度の大災害を経験した被災地の高校生として、自分たちが勇気を発信するつもりだ。(敬称略)

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