【21世紀枠・只見、初のセンバツへ(上)】豪雪が鍛えた強い絆

 
路面の雪に注意を払いながらロードワークする只見ナイン

 21世紀枠で選抜高校野球大会(センバツ)の切符をつかんだ只見。冬季は2メートルを超える積雪で満足な練習ができず、部員たちは室内を中心に工夫を凝らしながら汗を流す。豪雪地帯の逆境を乗り越え、念願の甲子園出場を決めた只見の足跡をたどる。

 「21世紀枠出場校の名に恥じぬよう、できる限りの準備をして大会に臨みたいと存じます」。1月28日午後、吉報の電話に伊藤勝宏校長が拳を握りしめながら力強く答えた。雪深い只見に一足早く届いた"春"。部員たちは感情を爆発させて喜んだ。

 多くのハンディが部員たちの心を強くしてきた。冬の只見町。町民は朝早く起きると、まず除雪作業を始める。部員たちも自宅をはじめ、学校敷地内の雪かきを黙々と進める。吉津塁主将(2年)は「雪かきも筋力トレーニングの一つ。好きな野球のため当たり前のこと」と白い歯を見せる。

 同校には屋内練習場がなく、11月から3月末までグラウンドは雪で使用できない。それでも天候に恵まれた日は長靴を履いて雪上を走ったり、学校から田子倉ダムの近くまで約12キロのロードワークに励んだりする。

 使えるものは何でも使う。投手陣のマウンドは体操マットを折り畳んで傾斜をつくり、飛球は体育館2階からボールを投げて捕球する。打撃練習では空中で揺れるバドミントンのシャトルをボール代わりに使い、バットの芯で正確に捉える力を養っている。

 部員はマネジャー2人を含め15人で、紅白戦も組めない。練習中、部員たちは輪を作り、互いの修正点などについて意見を出し合う。「ほとんどが幼なじみ。少人数だからこそ結束力は強い」と吉津主将。先輩後輩関係なく気付いたことを素直に報告し合い、プレーの質向上に努めている。

 シャトルランやスイングスピード、太ももの太さなどを計測し、成果の"見える化"も取り入れた。厳しい環境下でたどり着いた夢の舞台。只見ナインは「多くの人に元気を与えられるプレーを見せたい」と練習に熱を込める。

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