【21世紀枠・只見、初のセンバツへ(中)】甲子園経験者の改革

 
外部監督として選手たちの指導に当たる長谷川監督(左)

 只見を率いるのは甲子園に出場した経験を持つ男だ。只見町出身の長谷川清之監督(55)は、学法石川高3年時に4番センターとして夏の甲子園出場を果たした。「何が起きるか分からないのが甲子園」。戦いの厳しさも知る指揮官が38年ぶりに聖地の土を踏む。

 長谷川監督は高校卒業後、社会人野球の住友金属鹿島でプレーした。その後、古里に戻って民間企業で働きながらスポーツ少年団でコーチを務めていた。

 その中、町役場や高校関係者から監督就任を打診された。「高校野球に関わりたい」。そんな思いを抱いていた時だった。高校時代の恩師、故柳沢泰典氏が指導者になることを望んでいたこともあり背中を押されるように、「古里で甲子園を目指そう」と決心した。それから外部監督として指導歴は20年になろうとしている。

 就任当初、まず取り組んだのが選手の意識改革だった。夏は野球部に所属し、冬は特設スキー部などで活動する部員も少なくなかった。甲子園を目指すには明確な目標設定とチームの団結が不可欠と考え「(当時の選手に)野球に専念できるか厳しい判断を迫った時もあった」と振り返る。

 それまではなかった冬季の遠征も取り入れた。雪でグラウンドが使えない時期に土の上で練習や練習試合をこなし、雪のない他地域との差を埋めようとした。もう一つの目的もあった。他校のグラウンドなどに掲げられた「甲子園出場」の文字を見て、甲子園への強い思いを選手に植え付けていった。

 今も遠征先に向かうため民宿などから借りたバスに選手たちを乗せ、自らハンドルを握る。冬は午前1時から道路の除雪業務をこなした後、選手を指導する日もある。「冬に大きな根を張って春に花を咲かせる」が指導のモットーだ。開幕まで2カ月を切り、堅実な只見らしい野球を発揮するため調整が続く。

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