【21世紀枠・只見、初のセンバツへ(下)】町民の応援や支援が力

 
屋内の駐輪場で打撃練習に励む吉津主将。町民らの支援に恩返ししたいと甲子園での活躍を誓う

 「只見高は地域の希望」。高校のある只見町民は口をそろえる。人口約4千人の町は過疎が進み、全校生86人の同校は来年度から1学年1クラスとなる見込みだ。逆境の中、住民の応援や支援の輪が同校を甲子園に導く大きな力になった。

 只見高は2002年から町と連携し、町外から入学を希望する生徒を対象に宿泊施設を提供する「山村教育留学制度」を導入している。この制度を利用し町外から寮暮らしする会津若松市出身の室井莉空(りく)副主将(2年)は「多くの支援に感謝している。生活の自立と長谷川清之監督の下で野球がしたくて(只見を)選択した」と話す。同じ雪国の会津若松とですら雪の量が全く違うことに驚いたという室井。部活の仲間や町民の声援が支えとなっているという。

 チームには長距離打者や140キロ以上の球を投げる投手はいない。1976年創部の只見は、昨秋の県大会で春夏秋通じて初の8強入りの快進撃を見せた。酒井悠来(はるく)(2年)は4試合に先発し、緩急を生かした投球で安定感を見せた。酒井怜斗(1年)や山内優心(2年)ら打線上位陣の出塁率は高く、吉津塁(2年)の勝負強さが光る。粘り強い守備からリズムをつくり、少ない好機を得点につなげる。全員が複数ポジションを守れるのもチームの特徴だ。

 「応援してるぞ!」。部員にはロードワーク中にも町民から声がかかる。主将の吉津は「モットーとしている『全力疾走』を多くの人に見てほしい」と意気込む。ただ懸念もある。長谷川監督は「新型コロナウイルス感染拡大で遠征や土の上での実戦ができない」と不安も口にする。逆境を工夫と団結力で乗り越えてきた只見ナインが、甲子園で強豪校に挑む。(この連載は中田亮が担当しました)

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