「なでしこ」希望の大輪咲かせた 聖火リレー、復興象徴の地に

 
聖火のともったトーチを手に出発する第1走者の2011年なでしこジャパンメンバー=25日午前、Jヴィレッジ(代表撮影)

 世界一の「なでしこ」の花が本県復興の象徴の地にかれんに咲いた。「明るいニュースがない中で、前向きになれるニュースとして広がったらいいな」。Jヴィレッジを拠点とした東京電力女子サッカー部マリーゼに所属していた鮫島彩さんは、本県に思いをはせながら大役を果たした。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が起きた2011(平成23)年のサッカー女子ワールドカップドイツ大会。苦しみながらも勝利をもぎ取り、大輪の花を咲かせた「なでしこジャパン」の姿は、失意にあった県民に一歩を踏み出す勇気を与えてくれた。

 原発事故で全てが失われた。青々とした天然芝が魅力だったピッチに砂利が敷き詰められ、マリーゼが数々の熱戦を繰り広げたメインスタジアムに社員寮が建設された。サッカーの聖地は見る影もなくなった。

 それでも10年の時を経て、芝生が広がる美しい光景が戻った。全天候型練習場も整備され、将来の「なでしこ」がボールを追い掛ける姿もある。聖地は復活を遂げ、聖火の出発地となった。

 鮫島さんと共にマリーゼに所属し、本県を「第二の古里」と呼ぶ丸山桂里奈さんは感慨もひとしおだ。「走ったときにアスファルトに私の感謝の気持ちを伝えたら、福島のアスファルトもそれを受け取ってくれた」と独特の表現で心境を明かした。

 新型コロナウイルスの収束が見通せず、感染力が強いとされる変異株の広がりも懸念され、「復興五輪」の機運醸成の障壁となっているが、監督だった佐々木則夫さんはこう強調した。「(五輪は)新型コロナや復興道半ばの東日本の皆さんに必ずや元気とエールを送ることができると私は信じている」。名将のひと言は、なでしこジャパンから始まった聖火が120日後、東京・国立競技場を優しく包み込む姿を予感させた。

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