【聖火リレールポ】富岡再生感じた200メートル 希望をつなぐ

 

 握り締めたトーチに聖火がともる。県民の復興への願いと未来への希望が込められた小さな明かり。これから始まる聖火ランナーという大役に胸が高鳴った。

 Jヴィレッジを出発した東京五輪の聖火リレー。富岡町の第4走者として、災害公営住宅が立ち並ぶ団地に設けられた中継地点に立った。「福島の元気を伝えたい」「復興への支援に恩返しをしたい」。富岡町の約1・3キロの区間を走る6人のランナーの思いは同じだった。

 少し冷たく感じる風が周りを見渡す冷静さを取り戻させてくれた。沿道には聖火を一目見ようと集まった住民の姿。1年越しの聖火リレーへの期待感がひしひしと伝わってきた。

 車両を先頭に第3走者が近づいてくると、沿道で拍手が起きた。手を振って迎え、「トーチキス」で聖火を受け取り、ゆっくり一歩。東日本大震災、東京電力福島第1原発事故から10年間の記憶が不思議とよみがえってきた。

 震災当時、高校1年生だった。高校のある白河市も土砂崩れなどで被害が出たが、地震と津波、そして原発事故の複合災害に見舞われた浜通りの状況は想像を超え、人の姿が消えた町に衝撃を受けた。2017(平成29)年4月の一部避難指示解除から間もなく4年がたつ富岡町。トーチを手に眺めた町には新しい住宅も目立ち、暮らしの再生と復興の歩みを感じた。

 約200メートルの走行距離の半分を過ぎたころ、聖火が消えるアクシデントがあった。動揺を隠しきれなかったが、スタッフの素早い対応で火がともされ、沿道で手を振る住民に力をもらいながら、無事に次の走者につなぐことができた。

 聖火リレーを終えて迎えてくれたのは、住民の温かな笑顔だった。新型コロナウイルスの感染拡大で先の見えない生活が続くからこそ、希望をつなぐ意義がある。記者として県民に少しでもエールを届けたい。そう誓う一日となった。(いわき支社・緑川沙智)

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