今井正人選手、集大成MGCへ パリの道「福島が背中押した」

 
「MGCで全てを出し切る」と意気込む今井さん=福岡県宮若市

 「福島からの応援で背中を押してもらってきた。まだまだくじけず、頑張らないといけない」。来年のパリ五輪のマラソン日本代表の座を狙う福島県南相馬市小高区出身の今井正人さん(38)=トヨタ自動車九州=は古里への思いを胸に、集大成の大会と位置付ける今秋の代表選考競技会「MGC(マラソングランドチャンピオンシップ)」に臨もうとしている。

 今井さんの実家は東日本大震災の津波で被災。東京電力福島第1原発事故により避難区域となり、両親らは避難し、現在は茨城県に転居した。「(福島の)復興は確実に進んでいるが、前に進めていない部分もある。地元の同級生たちから連絡があり、若い世代が地元で活気ある活動をしていると聞いている。頼もしさを感じる一方、自分も走りで役立ちたい」と故郷への思いを原動力にしてきた。

 今井さんはこれまで日本代表の切符をあと一歩のところで逃してきた。2019年の東京マラソンでMGCの出場権を獲得したが、MGCの結果は25位で東京五輪への出場はかなわなかった。

 「何度も悔しい思いをしてきた。続けられたのは五輪出場という目標をぶれずにやってきたから。失敗はマイナスばかりではない。むしろ全部プラスと思っている」。結果を出せなかったら区切りを付けると覚悟を決め、出場した昨年2月の大阪マラソン・びわ湖毎日マラソン統合大会で6位となり、今秋に開かれるMGCの切符をつかんだ。

 毎日が最後との思いで練習に打ち込んだことが結果につながった。「できないことを受け入れて何ができるかに目を向けられるようになったのが一番大きい。大阪(マラソン)は、今日で競技が最後になるかもと思った。出し惜しみしたら一生後悔する。最後まで陸上人生の全部を出す思いで走った」と振り返る。

 今井さんは中学時代に都道府県対抗駅伝の県代表に選ばれ、好記録を出したことで陸上競技の道を選んだ。原町高を経て、進学した順天堂大では箱根駅伝に4年連続出場。3年連続で山上りの5区で区間賞を獲得し、「山の神」とも呼ばれるようになった。

 「五輪の舞台に立ち、マラソンで戦う」。今でも高校時代に立てた目標は変わらない。今井さんは現在、練習中に痛めた足の回復と体づくりに励む。「まずはMGCで全てを出し切る。その先は正直、現時点では見ていない。だけど悔いのない走りがパリにつながると信じている」。今井さんは福島からの応援を力に夢の五輪出場に挑む。

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