【聖火ランナーの思い(上)】元双葉南小校長・泉田淳さん 教え子の思い共に

 
伝承館の広場で昨年子どもたちから贈られた横断幕を広げる泉田さん

 「双葉の子どもたちの思いを背負って走りたい」。双葉町の泉田淳さん(61)は昨年、いわき市に仮設校舎を置く双葉南小の校長を退任した。本当であれば、教員生活の最後に聖火ランナーとして走るはずだった。その思いは延期が決まってからのこの1年、一度も揺らいだことはない。

伝承館スタッフに

 いわき市で生まれ育ち、双葉町出身の妻の家に婿入りした。昨年3月、38年間の教員生活を終えた。今は、双葉町に昨年開館した東日本大震災・原子力災害伝承館でアテンドを務め、震災の記憶を次世代に伝える。

 新型コロナウイルス感染症の影響で、聖火リレーだけでなく、離任式も行われないまま子どもたちとの別れを迎えた。しかし、伝承館に勤める今も、双葉の子どもたちとの縁はつながっている。いわき市に仮設校舎がある双葉南、北両小が双葉町内と仮設校舎をインターネットでつなぎ、ライブ中継する「ふるさと遠足」。泉田さんは講師として子どもたちと再会し、双葉の現状を話している。

 昨春からもうすぐ1年がたつ。この間に町の避難指示の一部が解除され、新しい双葉駅舎や伝承館、産業交流センターが次々と完成した。しかし、東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から間もなく10年を迎える今も、被災の爪痕は色濃く残り「まだまだマイナスの状態」と感じる。

 それでも、新しいまちに生まれ変わろうとしている古里を間近で見つめながら、泉田さんは芽生えつつある希望を実感する。聖火を掲げて走る姿を子どもたちに見せることで、「夢や希望を持って頑張れば、将来きっとすてきなことがあるよと伝えたい。双葉の人間としての誇りも持ってほしい」と思いを強める。

 予断を許さない新型コロナの感染状況など、開催機運が高まらないことへの懸念はある。子どもたちにとどまらず、世界に「福島は元気だよ」と発信するため、そして血のにじむ努力を続けるアスリートのためにも「聖火リレーで機運を盛り上げたい」と話す。

 昨年、子どもたちから贈られた応援の横断幕は大切に保管している。「延期で1年待ったから、余計に楽しみ」と笑顔を見せるが、本当は「聖火リレーなくならないでという気持ちが大きい」。多くの思いを背負い、開催を切に願う。

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