【宮城スタジアムルポ】サッカー女子開幕戦、拍手で後押し
観客の入ったスタジアムは試合開始のホイッスルとともに、どんどん熱を帯びていった。キューアンドエースタジアムみやぎ(宮城県利府町)で行われたサッカー女子中国―ブラジルの開幕戦。新型コロナウイルス禍で大半の会場が無観客となる中、観客の拍手が選手を後押しした。
2002年日韓サッカーワールドカップでも使われ、約5万人が入る東北最大規模のスタジアム。感染症対策で入場の際には検温が行われた。人数制限もあり、まばらなスタンドは観客同士の間隔も十分あるように見えた。声を出しての応援はできず、観客は精いっぱいの拍手で応援を送った。試合終了後は両チームの健闘にスタンドからの拍手が鳴りやまず、選手が手を合わせたり、頭を下げて応えたりする様子もあった。
スタンドには東日本大震災で受けた支援への感謝を伝える横断幕も掲げられた。製作したのは、「ちょんまげ隊長」として知られる日本代表名物サポーターで、本県でもサッカーを通じた復興支援などに取り組む角田寛和さん(58)=千葉県在住。震災時に多くの外国人サポーターがTシャツに「がんばれ日本」と書いて応援してくれたことへの感謝を、出場国の言葉で書いたという。
「テレビで見る日本や世界の人に何か少しでも『復興五輪』としての思いを伝えたかった」と角田さん。観客が集まるJR仙台駅前では、震災10年の歩みを伝える語り部の催しも開かれていた。新型コロナで「復興五輪」の大会理念が薄れつつある今大会。有観客での開催を選んだこの会場では、理念を体現しようとする姿が確かにあった。(佐藤智哉)