男子400障害山内、強気のレース 日本人初の決勝は持ち越し

 
【男子400メートル障害準決勝】力走する山内。3組6着で敗退した=国立競技場

 運命を変えた5月9日の国立競技場から84日。「ここに立てたことは忘れられない経験になった」。東京五輪陸上男子400メートル障害の山内大夢(ひろむ)(早大、会津高卒)は、日本人初のファイナリストを目指した五輪のレースで、悔しさと日本代表の誇りを胸に刻んだ。

 準決勝は外側8レーンからスタート。強気のハードリングで前半から快調にタイムを刻んだが、後半の伸びを欠いた。「周りの勢いに乗ってしまい、力が残っていなかった」。49秒35の組6着で決勝の上位8人には入れなかった。

 同種目は、アテネ五輪の為末大らの準決勝進出が最高。初出場で日本を代表する侍ハードラーと肩を並べたが、予選よりタイムを落とすなど「まだ五輪で戦う走力と技術が足りない」と力不足を認めた。会津高3年で出場した2017年全国高校総体(インターハイ)で2位に入り、当時開催が決まっていた東京五輪出場を高らかに誓った。ただ「どうしたら五輪に出られるかなんて、まだよく考えていなかった」。大学生となり、五輪の1年延期が決まってもそれは変わらなかった。転機は5月9日の五輪テスト大会だった。自己ベストを1秒近く縮める48秒84で五輪の参加標準記録を突破し、一躍、五輪候補に名乗りを上げた。

 夢だった五輪、その準決勝で見せた走り。納得できるものではなかったが、フィニッシュ後はコースを振り返り、一礼した。「貴重な経験と支えてくれた方々への気持ちだった」。世界の猛者と戦った2レースは21歳の山内にとって大きな糧になったはず。夢は3年後、パリ五輪に続く。

父「夢かなえてくれた」

 決勝進出はならなかったが、五輪準決勝の舞台を駆け抜けた山内。会津高時代の指導者でもある父淳一さん(63)は「教え子の五輪出場という夢をかなえてくれた。楽しませてもらった」と感慨深げに語った。

 同種目では日本勢で唯一の準決勝進出で「誰にでもできるわけではない貴重な経験を積んだ」とまな弟子でもある息子の成長を喜ぶ。「インカレ(日本学生選手権)もあるし、その先にはパリ五輪もある。次の目標に向かって頑張ってほしい」と期待を込めた。

 県陸上競技協会の鈴木浩一会長も「ぜひ3年後のパリ五輪を目指して頑張ってほしい」と山内を激励し、「一生懸命取り組む姿が後輩に力を与える。ありがとうと言いたい」とたたえた。

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