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映画「こころの山脈」
(本宮市)
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子に思いを託し母親ら制作
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撮影場所の中心だった本宮小は当時木造校舎。現在は建て替えられ、劇中で子どもたちと教師が登校するシーンに登場する校門だけが、当時のまま同校東側入り口に残る
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あれが阿多多羅山、
あの光るのが阿武隈川。
ここはあなたの生れたふるさと
阿武隈川にかかる昭代橋(下の橋)で、安達太良山を望みながら産休補充教師の本間秀代が教え子の清に「智恵子抄」(高村光太郎著)の詩の一節を語る。旧本宮町を舞台に教師と児童の心温まる交流を描いた映画「こころの山脈」(1966年)のワンシーンだ。
作品は、良質な映画を子どもたちに見せようと、旧本宮町の母親たちが中心となりつくった「本宮方式映画製作の会」が、近代映画協会の協力で制作した。脚本は本県出身の千葉茂樹さん。映画監督吉村公三郎さんがメガホンをとり宇野重吉さん、山岡久乃さん、吉行和子さん、殿山泰司さんら一流俳優と本宮小の児童が出演。65(昭和40)年秋、本宮小、昭代橋などで撮影が行われた。
「心豊かな子どもたちが育つようにと始めた。行動力はすごかった」と同会事務局の本田文子さん(84)は振り返る。撮影で使う着物や米びつなどを持ち寄り、運動会シーンでは町民が重箱を持ち大勢集まるなど町ぐるみで支援。制作費を集めるため全県にチケット購入を呼び掛けたという。本田さんは「この映画は本宮の一つの文化財」と話す。
昭代橋のシーンでは問題児だった清が「先生、おれこれからうんと勉強する」と誓うと、本間先生が「子どもにはね、無限の可能性がある。清君のこと楽しみにしてるよ」と励ます。本宮の母親たちが映画を通して子どもに託した思いは、今も変わらない。
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本宮小と昭代橋 映画に登場した木造校舎は1901(明治34)年から69年まで使用された。当時の橋は31年完成の鉄筋コンクリート製。道路拡張のため85年に架け替えられた。
▽問い合わせ=本宮市歴史民俗資料館(電話0243・33・2546) |
【 10 】
2008年6月5日 福島民友新聞社・木曜ナビ
ほっと面掲載
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(
文・伊東隆裕 写真・永山能久 )
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