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尾瀬
(桧枝岐村)
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自然美歌った「夏の思い出」
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ニッコウキスゲが咲いた尾瀬ケ原・中田代。広がる夏空は白い雲をぽっかりと浮かべている。奥は至仏山
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「天上の楽園」と称され、訪れる人に深い感動を与える尾瀬の風景は1949(昭和24)年、江間章子作詞、中田喜直作曲の「夏の思い出」に歌われ、そのみずみずしい自然の美を日本人の心に色鮮やかに印象付けた。
朝霧と静けさに包まれた尾瀬。聞こえるのは野鳥の柔らかいさえずりと木道を刻む自らの靴音だけ。霧の中を進むと、やがて視界は広がり、水辺でミズバショウがにおい立つように純白の包を広げている―。口ずさめば、訪れた誰もが「あの日の尾瀬」を脳裏に浮かべ、訪れたことがない人も「はるかな尾瀬」の美しさに想像を膨らませる。
「夏の思い出」はNHKラジオで放送されると、たちまち日本人の心をとらえ、尾瀬へのあこがれをかき立てた。作詞の江間は尾瀬を知らなかったが、番組担当者から「戦後の荒廃した日本に夢と希望を与える詩を」と依頼され、その熱意に動かされ詩を書いたという。作曲の中田も尾瀬を訪れたことはなかったといわれる。名曲は2人の豊かな感性と想像力によって生み出された。
梅雨明けの尾瀬は、湿原一面が緑色に染まり、時折吹くさわやかな風が草花を揺らす。尾瀬ケ原ではニッコウキスゲが咲き競い、尾瀬沼は澄んだ水面に白い雲と雄々しい燧ケ岳を映す。
昨年8月には日光国立公園から分離・独立、29番目の国立公園「尾瀬国立公園」となった。今夏も大勢のハイカーが木道を行き交い、名曲に歌われた尾瀬に目の前の光景を重ねている。
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MAP |
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尾瀬 本州最大の高層湿原・尾瀬ケ原を中心に広がり、ミズバショウやニッコウキスゲなど多種多様な植物が群生する。日本の自然保護運動の原点の地。尾瀬国立公園は福島、群馬、新潟、栃木4県にまたがる。
▽問い合わせ=尾瀬桧枝岐温泉観光協会(電話0241・75・2432) |
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2008年7月24日 福島民友新聞社・木曜ナビ
ほっと面掲載
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(
文・佐藤雄司 写真・一ノ瀬澄雄 )
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