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勿来関跡
(いわき市)
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日本古来の文化が漂う空間
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関跡から勿来関文学歴史館まで続く詩歌の小径。源義家、小野小町、斎藤茂吉の歌碑などが並び、散策スポットとして人気を集めている
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「来ることなかれ」を意味し、北方の民の南下侵入を防ぐ関門として約1500年前に設置されたとされる勿来関。関所としての厳かなイメージとは別に、さまざまな歌人、文人がその美しさにひかれ和歌を詠んだ「歌枕の関」としての華やかな側面を持つ。
現在の勿来関跡は県立自然公園として整備され、多くの観光客や歴史愛好家が集まるほか、春はたくさんの桜が咲き誇る名所としても知られる。源義家の騎馬像が鎮座する関跡から勿来関文学歴史館まで約100メートル続く「詩歌(しいか)の小径」にはこの地を詠んだ歌碑や石碑がいくつも並ぶ。
このうち、千載集にあり、源義家が後3年の役に向かう際に詠んだとされる「吹く風を勿来の関と思えども道もせに散る山桜かな」は、毎年春に多数の山桜が彩るこの地の様子を情緒豊かに表現した歌として知られる。厳しい戦いに向かうつかの間、桜の美しい情景に魅せられた義家の姿に思いをめぐらせることができる。
また、「惜しめどもとまりもあへずゆく春を勿来の山のせきもとめなむ」(紀貫之)、「みるめ刈るあまのゆききの湊路になこその関もわが据えなくに」(小野小町)など、平安期の歌人も遠く離れた都からこの地を思い、歌にした。
公園内の「吹風殿」は義家の歌にちなみ、名付けられた施設で昨年オープン。平安時代の邸宅の寝殿造りを模して造られ、能や野だて、歌会、伝統芸能などさまざまなイベントに使用され、日本古来の文化に親しめる空間となっている。
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MAP |
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勿来関 白河関、念珠関(山形県)と並び、奥州3古関の一つと称される。古くから近代まで「歌に詠まれた関」としても名高い。また斎藤茂吉や徳富蘆花などが文学作品に残している。
▽問い合わせ=勿来関文学歴史館(電話0246・65・6166) |
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2008年8月28日 福島民友新聞社・木曜ナビ
ほっと面掲載
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(
文・鈴木祐介 写真・吉田義弘 )
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