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ふくしまの舞台
湖南町
(郡山市)
井上靖の短編小説に登場

湖南町

現在の湖南町三代の街並み。江戸時代は白河街道の宿場として、にぎわったという

 郡山市の最西端、猪苗代湖南岸に位置する湖南町。月形、中野、三代、福良、赤津の5村が合併し1955(昭和30)年に誕生した湖南村が前身で、65年に同市と合併した。その旧湖南村が誕生する2年前、「闘牛」「天平の甍」「敦煌」など数多くの名作を残した作家井上靖は、この町を取り上げた短編小説「湖上の兎(うさぎ)」を発表した。
 小説は、作者の「私」が入院した際、隣の病室に入院していたという湖南町出身の女性をめぐる物語。女性は美しい顔立ちだったものの気が強く、離婚を経験後、実力で会社の資材課長となり、預金30万円、70万円相当の株券を残して38歳で亡くなる。
 女性が亡くなった後、友人と猪苗代湖を訪れた「私」は、「その濃い鮮やかな緑色の板の上を、白い波頭は何百何千の白い兎のように跳ね飛んでいた。今までに見たどの湖よりも烈(はげ)しく騒ぎ動いている感じだった」と情景を描写する。その文章からは女性の生きざまに通じる水面(みなも)の表情を通し、別名「天鏡湖」とも呼ばれる猪苗代湖の神秘的な魅力が伝わる。
 民俗学者柳田国男も紀行文「勢至堂峠」の中で旧三代村(現湖南町三代)に触れ、馬の競りの様子などを記した。作品の冒頭では「猪苗代の湖岸では、東南の一隅が最も好いと思う」と、湖南側から見た猪苗代湖の美しさをたたえた。
 作品の舞台となった町の湖岸は今も、夏に湖水浴、冬に白鳥が飛来するなどしてにぎわい、人々に愛されている。
  >>> MAP
 湖南町 江戸時代、白河街道の宿場として三代などが栄えた。三代と須賀川市長沼との境にある勢至堂峠は豊臣秀吉や吉田松陰、伊能忠敬らが越えたと伝えられる。
 ▽問い合わせ=湖南公民館(電話024・983・2543)
【 31 】 2008年10月30日 福島民友新聞社・木曜ナビ ほっと面掲載
( 文・佐藤友亮 写真・一ノ瀬澄雄 )  
 

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