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小名浜
(いわき市)
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米兵時代、戦後2カ月滞在
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廃艦後、防波堤となっていた軍艦をかたどって敷かれたレンガ
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本県の海の玄関口小名浜港があるいわき市小名浜。沖合では大型貨物船が行き交い、臨港道路は大型トラックが走る。同港1・2号埠頭(ふとう)間のアクアマリンパークは年間200万人以上の観光客が訪れる県内有数の観光スポットで、魅力的な施設が並ぶ。
貿易港、観光地として発展を遂げる小名浜港だが、60年以上前は松林と浜辺が続いていた。1946(昭和21)年、小名浜に2カ月という短い期間滞在した一人の米兵がいた。後にピュリツァー賞を受賞する米国の作家ノーマン・メイラーだ。
メイラーは同年2月と3月、旧日本軍の弾薬などを処理するため小名浜に駐屯した。炊事兵だったというメイラーの小名浜に対する印象は、彼の小説「アメリカの夢」の解説の中で「小名浜の美しい海岸の印象はいまも彼の心に鮮やかに焼きつけられていて、しきりに懐かしがっている」と記されている。短編小説「兵士たちの言葉」の中には「港町は、美しかった」との一文もある。
駐屯地の近くに知り合いがいたという元小名浜漁協理事の小野芳治さん(83)は、「米兵の中には紳士もいれば、荒くれ者もいたと聞く。当時はメイラーの存在なんて知らないだろうから、どんな人かは分からないが、彼にとって小名浜は作品の発想の原点になったのではないか」と語る。
小名浜を離れた後、メイラーが二度と小名浜の地を踏むことはなかったとみられる。いまの小名浜港をメイラーが見たら、その変ぼうぶりに何を思うだろう。
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ノーマン・メイラー 1923(大正12)年、米国生まれ。ベストセラー「裸者と死者」は第2次大戦を描いた最良の戦争文学といわれる。2007(平成19)年11月10日、84歳で死去。
▽観光の問い合わせ=いわき観光まちづくりビューロー(電話0246・27・2871) |
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2008年11月13日 福島民友新聞社・木曜ナビ
ほっと面掲載
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文・佐藤正一 写真・吉田義広 )
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