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ふくしまの舞台
飯坂温泉
(福島市)
与謝野晶子がぬくもりの歌

飯坂温泉

愛宕山のふもとにある与謝野晶子の歌碑。大胆に官能を歌い上げたまなざしとは違う歌人の心象を伝える

 「飯坂のはりがね橋に雫(しずく)する吾妻の山の水色の風」。情熱の歌人与謝野晶子が1911(明治44)年8月の飯坂温泉(福島市)を歌い上げた気韻生動の世界だ。
 はりがね橋は摺上川に架かる当時の十綱橋の通称。「みだれ髪」発表から10年。33歳になった「やわ肌のあつき血潮」の歌人は、川面のきらめきに束縛されない生き方の輝きを見たのだろうか。
 「講演会帰り、伊達で汽車を降り、トテ馬車か軽便で飯坂に入り、最初に詠んだ歌だと思います」と飯坂町史跡保存会会長の椎野健二郎さん(77)。旅装を解いたのは文人に愛された宿の角屋(今の聚楽)。夫の鉄幹、作家の佐藤春夫、水上滝太郎が一緒だった。
 飯坂では5首作ったが、椎野さんが晶子らしい歌に挙げたのが「わがひたる寒水石の湯槽にも月のさしいる飯坂の里」。「鯖湖湯で詠んだのではないか。御影石の寒水石だと、湯が太平洋の波のような流れ方をする。夫が創刊した『明星』の廃刊で晶子の収入が一家を支えていた内面を映すようでいい歌だ」という。
 愛宕山のふもとに十綱橋建立の恩人とたたえられる伊達一の碑と並んで立つ晶子の歌碑に未来を語る橋を思う。この年9月には女性解放を掲げた「青鞜」創刊号を飾る詩で「すべて眠りし女(おなご)今ぞ目覚めて動くなる」と力強く歌い、翌年にはヨーロッパで見聞を広めている。
 新たな旅立ちの充電の地にもなっただろう飯坂、晶子の心象風景を映す歌に湯の里のぬくもりが重なる。
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 与謝野晶子(1878―1942) 詩では「君死にたまふことなかれ」が有名、源氏物語も全訳。5男6女を育て、評論家として積極的に発言、森鴎外が「過激なことを言う」ともらした逸話も。
 ▽問い合わせ=飯坂温泉観光協会(電話024・542・40241)
【 36 】 2008年12月4日 福島民友新聞社・木曜ナビ ほっと面掲載
( 文・阿部光宏 写真・吉田義広)  
 

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