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「蛙の詩人」の故郷
(いわき市)
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作品の根底に映る原風景
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草野心平が生まれ育った生家。市民や観光客に公開されている
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「蛙(かえる)の詩人」として知られる草野心平(1903−88)が生まれ育った、いわき市小川町。16歳で上京した心平はその後、何度となく故郷の小川町に戻っている。
心平は家庭の事情で両親や兄弟たちと離れ、祖父母と暮らす子ども時代を送った。大地や花、動物などに親しみ、わんぱくな少年時代を送った心平。自然の息遣いをストレートに感受しながら成長したことが、後の作品作りに大きな影響を与えているという。
その幼少期の印象が強く鮮やかに、心平の心に残っていたことをうかがわせる一つの詩が残っている。
阿武隈山脈はなだらかだ つた。
だのに自分は。
よく噛んだ。
鉛筆の軸も。
鉛色の芯も。
阿武隈の天は青く。
雲は悠悠流れてゐた。
(「噛む」より)
「すべての自然とともに生きる強い共生感はこの16年間にはぐくまれ、詩の底流を流れているのではないか」。草野心平記念文学館専門学芸員の小野浩さん(54)は、心平の心の内を推し量る。
小川町を流れる夏井川沿いの渓谷、背戸峨廊は心平が名付けた。ここにも故郷の自然を慈しんだ心平の思いをしのぶことができる。
人生の岐路に立つたび戻ったきた場所、小川町。人間、そして詩人として心平の心の根底をこんこんと流れるものは、カエルの鳴き声が山地に響き渡るふるさとだったのかもしれない。
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MAP |
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草野心平記念文学館 豊かな森に囲まれた丘の上に立つ。常設展示室では、時代の流れとともに心平の人生と詩作の道をたどり、心平の文学と芸術世界の深さと広がりを堪能することができる。
▽問い合わせ=草野心平記念文学館(電話0246・83・0005) |
【 37 】
2008年12月11日 福島民友新聞社・木曜ナビ
ほっと面掲載
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(
文・紺野裕喜 写真・永山能久 )
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