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中山義秀の故郷
(白河市大信)
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小説のモデル「般若峠の碑」
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中山義秀記念文学館には、義秀の作品や遺品が数多く並んでいる
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白河市大信出身の芥川賞作家・中山義秀(本名議秀=よしひで)。小説「碑(いしぶみ)」の末尾で描かれた「般若峠の碑」のモデルが、大信地区の旧会津街道の道筋にある。
小説では、碑には東に「天狗(てんぐ)」、西に「おかめ」の顔が彫られている。東から峠を上る者には天狗が険しい顔で迎え、逆に峠を下る者にはおかめが愛嬌(あいきょう)を振る舞う。人生を見つめ続ける碑―。
現物は、栃木県ゆかりの「古峯神社」の石碑。火防の神として地元消防団の信仰も厚い。 小説のように顔が2つある。義秀は天狗とおかめの顔に描いたが、地元の人によると、実際は「烏天狗(からすてんぐ)」らしい。幼少に見た義秀には、何か思い入れがあったのかもしれない。
義秀は小学校に入学後、すぐ現在のいわき市に引っ越したが、故郷の思い出は強いよう。「魂のふるさと」と呼び、生涯、懐かしんだ。生家は1998(平成10)年の水害で倒壊した。
作品でも、故郷をうたった一節が多い。「幼少の思い出はこの村にとどめられている。その後、福島県内の町々を転々するようになっても、生まれ里の恋しさを忘れたことはなかった」(「日籠(ひごもり)の里」)。「ふるさとは私にとり、心の憩いの場所」(「白河の関」)。
義秀の生き方を知るには中山義秀記念文学館。作品や遺品に触れながら、「孤高の文士」の生涯をたどってほしい。功績をたたえようと、中山義秀文学賞も創設されている。
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MAP |
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中山義秀記念文学館 義秀の功績を顕彰しようと1993(平成5)年に設立。芥川賞受賞作「厚物咲」なども並ぶ。東北道矢吹インターチェンジから西に車で約15分。
▽問い合わせ=中山義秀記念文学館(電話0248(46)3614) |
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2009年2月19日 福島民友新聞社・木曜ナビ
ほっと面掲載
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( 文・水野智史 写真・矢内靖史 )
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