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福島遺産百選
天鏡閣(猪苗代町)
【 24 】
修復で再び明治の装い

窓ガラスの破損や壁に百数十のひび

新築当時を再現

新築当時を再現

明治時代のルネサンス風洋風建築のたたずまいを今に伝える。写真右上は、ひび割れた室内のしっくい壁の修復作業。修復後の天鏡閣は、往時をほうふつとさせる

 明治時代のルネサンス風洋風建築のたたずまいを今に伝える猪苗代町の国指定重要文化財・天鏡閣。1907(明治40)年に有栖川宮威仁親王が東北地方を旅行中に訪れた際、その風景の美しさに感動して建築された別邸は、昭和天皇が新婚の1カ月間を過ごされるなど、多くの皇族が利用してきた。
 その歴史ある建物も、東日本大震災で大きな被害に見舞われた。しっくい壁には百数十カ所のひび割れが発生し、明治時代から使用されてきた窓ガラスは破損。洋風建築の象徴とも言えるシャンデリアも外れてしまった。
 だが震災から約1カ月後には再オープンし、開館しながら進めてきた修復工事は昨年12月に完了。100年を超える歴史を持つだけに、汚れもあった室内はあらためて真っ白な塗装が施され、まさに建築された明治当時の様子を伝えている。
 (天鏡閣(電)0242・65・2811)


 4月から通常営業、会津観光に貢献
 笠間 一嘉(かさま・かずよし)さん/県観光物産交流協会
 修復作業は昨夏から、本格的に始まりました。歴史ある建物だけに、新しくなっていく壁やガラスを見ると、「真新しさ」を感じます。まだ雪は多いですが、春になれば徐々に解けてくると思いますので、ぜひ多くの方にご覧いただきたいです。
 東日本大震災以降、観光施設としてはやはり、風評被害はあります。原発事故の影響で団体客や子どもたちの来場は減少しました。一方で「応援」といって来てくださる方も大勢います。カレーの苦手な人が「これだけは食べられる」と、名物である「天鏡閣ケレー」を買いに来てくださったのはうれしかったですね。
 修復工事も終わり、4月からは通常通りの営業に戻る予定です。震災前以上にきれいになり、まさに建築された明治時代当時の様子を再現する形で完成しました。今年は大河ドラマ「八重の桜」も放送されていますし、会津の観光地として盛り上げていきたいです。

命名は大正天皇

命名は大正天皇

大正天皇が皇太子時代に、李白の詩句「明湖落天鏡」にちなんで天鏡閣と命名した。戦後、県に下賜された

ふくしま復興支援
 福島民友新聞社は、ふくしま復興支援プロジェクトの一環として、2012(平成24)年10月から13年5月まで、「ふる里の誇り ふたたび 福島遺産 百選 未来への歩み」を連載しました。
 「福島遺産 百選」は、県内それぞれの地域で「ふる里の誇り」として守り継がれてきた有形無形の宝を後世に残していこうと、福島民友新聞社が07年に県内外に呼びかけ、選定しました。
 しかし、計120件のうち31件の遺産が東日本大震災で被災しました。本プロジェクトは、あらためて地域の素晴らしい宝を再認識することで県民一人一人の誇りを取り戻し、「心の復興」につなげていくことを目的としたものです。

2013年3月19日付・福島民友新聞掲載
 
ふくしまが誇る美しい自然、歴史、文化
地域の宝を復興の力に
震災に耐えて
 東日本大震災に耐え、被害を免れた福島遺産もあります。これらは地域で県民に勇気と希望を与え続けています。

勝常寺の仏像群(湯川村)

勝常寺の仏像群(湯川村)

 9世紀初めに高僧・徳一が開山した勝常寺。国宝の「薬師如来坐像(ざぞう)」、両脇侍(きょうじ)の「日光・月光菩薩立像」の薬師三尊像をはじめ、国重文の「四天王立像」、徳一の自作といわれる「徳一菩薩坐像」など、平安前期の作を含む約30体が安置されている。(勝常寺(電)0241・27・4566)


八槻都々古別神社(棚倉町)

八槻都々古別神社(棚倉町)

 奥州一宮。現在は交通安全、五穀豊穣(ほうじょう)などを祈願する参拝者が多い。旧正月6日に行う「御田植祭」は、鎌倉時代から伝わり、狂言風の田遊びを表現した伝統民俗で、2004(平成16)年に国の重要無形民俗文化財に指定された。(社務所(電)0247・33・3505、午前9時30分〜午後4時)


常磐炭田遺産群(いわき市)

常磐炭田遺産群(いわき市)

 1985(昭和60)年を最後に全ての鉱山が閉山した常磐炭田一帯に残された、160カ所以上の遺産。坑口跡や選炭場跡などがあり、本州最大の炭田として日本の近代化をけん引した面影を残す。2007年に国の近代化産業遺産に認定された。(ヘリテージツーリズム協議会(電)0246・42・3155)

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