静寂の町に咲き誇る桜
全国有数の名所、町ぐるみで活動
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ひっそりと…
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【震災後】ひっそりと静まりかえった町に、いつもの年と変わらず見事な花をつけた桜のトンネル。震災前のにぎわいはなく、巡回のパトカーだけが走る=昨年4月
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国道6号から富岡二中に至る約2.5キロのL字形の通りに、約400本のソメイヨシノの並木が続く。春になると淡いピンクの花をつけ、美しい見事なトンネルが姿を現す。
夜の森地区の桜は、明治時代、旧小高町出身の半谷清寿氏が入植の記念に300本を植えたのが始まり。次男の六郎氏も植樹を続けた。現在、地区には約1500本の桜が植えられている。
開拓者の思いは町民にも受け継がれた。保護活動や桜をテーマにした地域づくりが町を挙げて進められ、全国有数の名所を築き上げた。満開を迎える4月上旬から中旬には「夜の森桜まつり」が催され、多くの花見客でにぎわった。
東京電力福島第1原発事故で警戒区域に指定され、立ち入りが制限されていたが、25日に桜並木の一部が居住制限区域に再編され、日中の立ち入りが可能となった。
(富岡町役場(電)0120・33・6466) |
桜の記憶つなぎ留め、心のよりどころに |
村井 良一さん(むらいりょういち)さん/「桜のとみおか」委員会委員長
昨春の一時帰宅で静寂に包まれた桜のトンネルを見上げた時、不思議な感覚に襲われました。科学技術や文明は素晴らしく、多くの恩恵を享受していますが、大災害の中でも堂々と美しく咲く桜を見て、自然と調和した生き方について考えざるを得ませんでした。
町内の仲間と、桜をテーマに活動してきました。桜は古里と自分をつなぐものであり、自分の根っこでもあります。桜との関わりの中で、無意識のうちに、自分自身が何者であるかを問い掛けているのかもしれません。
今、多くの町民が避難しています。古里を離れることは、古里を捨てることではありません。単に土地としての帰る場所ではなく、思い出や人のつながりと深く結び付いた心のよりどころ、それが古里です。桜並木もそういう存在にしたいのです。
来月には桜並木をバスで巡るイベントも予定しています。人が離れ離れになっている今だからこそ、桜の記憶をつなぎ留めるための取り組みが必要ではないでしょうか。
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にぎやかに…
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【震災前】満開の桜のトンネルの下ではヨサコイの演舞も繰り広げられ、多くの人でにぎわっていた
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福島民友新聞社は、ふくしま復興支援プロジェクトの一環として、2012(平成24)年10月から13年5月まで、「ふる里の誇り ふたたび 福島遺産 百選 未来への歩み」を連載しました。
「福島遺産 百選」は、県内それぞれの地域で「ふる里の誇り」として守り継がれてきた有形無形の宝を後世に残していこうと、福島民友新聞社が07年に県内外に呼びかけ、選定しました。
しかし、計120件のうち31件の遺産が東日本大震災で被災しました。本プロジェクトは、あらためて地域の素晴らしい宝を再認識することで県民一人一人の誇りを取り戻し、「心の復興」につなげていくことを目的としたものです。 |
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ふくしまが誇る美しい自然、歴史、文化 |
地域の宝を復興の力に |
震災に耐えて |
東日本大震災に耐え、被害を免れた福島遺産もあります。これらは地域で県民に勇気と希望を与え続けています。
水原のクマガイソウ群生地(福島市)
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クマガイソウはラン科の多年草。園芸用に採取されるなど自生地が激減、県の絶滅危惧1類に指定されている。福島市南端に位置する群生地では約8000株が自生、見ごろを迎える5月には県内外から多くの山野草愛好者らが訪れる。(松川町観光協会(電)024・567・2111)
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喜多方の蔵群(喜多方市)
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「蔵のまち」として名高い喜多方市には、約4200棟の蔵がある。小田付通りにはみそ蔵や酒蔵のほか、コーヒー店などに生まれ変わった蔵などが立ち並び、夜間にはライトアップされるなど人気の撮影スポットになっている。(喜多方市観光交流課(電)0241・24・5200)
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裏磐梯湖沼群(北塩原村)
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桧原、秋元、小野川、曽原の四つの湖と、五色沼などに代表される風光明媚(めいび)な湖沼群。1888(明治21)年7月15日の磐梯山の噴火によって生まれた。夏はキャンプやトレッキング、冬はワカサギの穴釣りなどで人気が高いスポット。(裏磐梯観光協会(電)0241・32・2349)
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民友携帯サイト
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