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こころに残す ふくしまの風景
天山文庫
(川内村)
山あいに映える茅葺き屋根と池
天山文庫
木立に囲まれ、ひっそりとたたずむ茅葺きの「天山文庫」。草野心平と村のきずなの証しとして、毎年7月、文庫を囲んで天山祭りが開かれている
 木立の中にひっそりとたたずむ茅葺(かやぶ)きの館。”カエルの詩人”として知られる草野心平(1903―88)と村民との心の交流から生まれた村のシンボル的施設だ。天山文庫の名は、シルクロードの天山山脈にちなみ、みちのくと中央の交流の場にしたいとの心平の思いが込められている。
 モリアオガエルに関心を寄せていた心平は、「うちの村にもモリアオガエルがいる」と、村の住職から手紙で紹介されたことから、1953(昭和28)年、初めて村を訪問した。交流はその後も続き、村は60年、心平を名誉村民に選び、褒賞として木炭百俵を贈った。その返礼として心平から、蔵書3000冊が贈られたのが、文庫建設の始まりだった。
 本を収納するだけでなく「先生が村においでになった際はここで過ごしてもらおう」と、心平の別宅としても設計された。多くの村民が材木を持ち寄るなど、村を挙げての労働奉仕で、文庫は66年に落成した。
 文庫の前庭には「十三夜の池」が掘られ、静かに水をたたえる。文庫建設の際、一緒に作業した心平が1本1本植える場所を指示したというアシビやヒメドウダン、古木などが、今はうっそうと生い茂っている。
 美しい茅葺き屋根と周囲の緑を水面に映す池は、山あいの景観と見事に調和し、訪れた人々の心を和ませる。
 落成記念として始まった天山祭りは毎年開かれるようになり、夏の一大イベントに成長。全国から集まった観客が郷土料理を味わいながら心平をしのぶ。村の伝統芸能の獅子舞や浦安の舞、神楽舞、川内村甚句などが祭りを華やかに彩る。
 >>> 行ってみよう
 JR常磐線富岡駅発の常磐交通バス川内行きで40分、JA南双葉川内支所前下車、徒歩5分。JR常磐線夜ノ森駅から川内行きバスで同支所前下車、徒歩5分。車の場合、県道小野富岡線で村内に入り、同支所前の交差点を南に折れると、すぐに木製の看板が見える。
<15> 2003.07.11
 

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